中小企業の家賃削減と資金繰り改善の順番について

2016/09/05

資産を保有していない中小企業のCREニーズとして家賃削減があります。業種業態に限らず、事務所や店舗、倉庫などの不動産を借りて営業している企業は多く存在します。CREというと、資産保有会社のみが対象と考える人も多いですが、資産を保有していない企業でも不動産に対する課題はあります。その1つが家賃です。

この家賃削減のマーケットですが、コンサルタントを入れて削減活動を行っているのは、ほとんどが大手企業と言われています。一説によると家賃削減を専門の会社に依頼するマーケットは、大手企業が全体の9割と言われています。

では中小企業に家賃削減のニーズが無いのかというと、そうではありません。家賃が高くて苦しんでいる中小企業はたくさんあります。しかしながら、中小企業が家賃削減に積極的でない点に関しては、私が直接ヒアリングする限り以下のような理由があります。

① そもそも一度決めた家賃を下げられることを知らない。
② 家賃減額を依頼することは申し訳ないことだと思っている。

また経費削減に追われている企業は、金額の大きい人件費に目が行くことが多く、経費削減ニーズはあっても、インパクトの小さい家賃削減には目が行かないということもあります。

そのため家賃削減には着手しない中小企業は多いです。中小企業の中でも、超優良企業は、上場する時に初めて家賃削減に着手するケースもあります。何故かというと、株式を上場すると株主への配当を行う必要があるからです。通常、上場の前と後では急に利益が増える訳ではないため、配当原資がありません。そのため家賃を削減することで利益を増やし、それを上場後の配当に回すということをするのです。

このように上場するタイミングで家賃削減を行う企業の例を見ると、家賃削減は企業にとって利益を生み出す「隠し玉」のような存在になります。この隠し玉は何も上場まで取っておく必要はありません。資金繰りに厳しくなった際は、まず家賃削減に着手してキャッシュフローを改善することをお勧めします。

キャッシュフロー改善の1つに、借入金の返済条件を下げるリスケジュールがあります。家賃を下げる前に、リスケによって銀行への借入金の返済条件を下げてしまう中小企業は多いです。しかしながら、一度リスケしてしまうと、追加融資が出来なくなるため、資金繰りが更に厳しくなります。リスケを行う前に、家賃削減が出来ないか、検討して見るのが良いでしょう。