不動産の買取保証とは?相場やおすすめの会社・利用上の注意点を解説

2019/06/23

マンションや戸建ての売却方法の一つに「買取保証」があります。
買取保証とは、一定期間、仲介による売却を行い、それでも売却できなかったら不動産会社が買い取ってくれるサービスです。

買取保証は、売れない不動産を確実に売る方法でもあり、使い方次第では効果的な売却方法となります。

一方で、使い方を間違えると、ただ安く売ることになりかねないため、利用するにあたっては注意も必要です。

そこで、この記事では「不動産買取保証」について解説いたします。
この記事を読むことで、あなたは不動産の買取保証とは何かを理解し、相場やおすすめの不動産会社、利用上の注意点、買取保証に向いている人等について知ることができます。
ぜひ最後までご覧ください。

この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役)
保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン

 

1.買取保証とは

最初に買取保証について解説します。

1-1.買取保証と仲介・単純な買取との違い

買取保証とは、一定期間、仲介で売却をチャレンジし、もしその間に売却することができなかったらそのまま不動産会社に買い取ってもらうサービスです。

仲介とは、通常の売却のことを指します。
不動産会社が買主をあっせんし、売主から買主へ直接売却するのが仲介です。

仲介のメリットは、直接買主に売ることになるため、価格が一番高くなります。
仲介のデメリットは、最後まで「いつ・いくら」で売却できるのか分からず、不確実であるという点です。

一方で、単純な買取とは転売を目的とした不動産会社への売却です。
不動産会社が一度下取りを行い、その後、不動産会社が自ら買主を見つけて転売します。
不動産会社は転売益を確保するために、買取による売却価格は安くなります。

買取のメリットは、早く確実に売却できることです。
買取のデメリットは、売却価格が安いという点になります。

買取保証とは、この「仲介」と「買取」をミックスした売却方法です。
最初に仲介を行い、仲介で売却できなければ買取を実行するのが買取保証です。

買取保証では、最初に不動産会社と買取価格を決めます。
また、仲介でチャレンジする販売期間と、仲介期間中の売出価格も設定します。
仲介でチャレンジする販売期間を「保証期間」と呼びます。

仲介が始まれば、仲介用の売出価格でスタートし、もしそのまま売れれば、売却は終わりです。
一方で仲介で売却できなかった場合は、最後は買取が実行され、不動産会社との間で取り決めていた買取価格で買い取ってもらいます。

1-2.買取保証のメリット

買取保証は、仲介と買取の「いいとこどり」が可能です。
買取保証のメリットは、以下の2点になります。

  • 仲介で高く売れる可能性がある
  • 最後は確実に売却できる

1つ目は、仲介で高く売れる可能性があるという点です。
仲介の期間中にしっかりと売却できれば、普通の価格で高く売ることができます。

2つ目は、最後は確実に売却できるという点です。

仲介には、「いつ・いくら」で売れるか分からないといった不確実性がありました。
マンションや戸建ての売却では、1年以上も売れず、大きなストレスを感じている人もいます。

買取保証であれば、最後は確実に買取で売却できますので、いつ売れるか分からないという心配がありません。
確実に売却を終わらせることができるという点は買取保証のメリットになります。

1-3.買取保証のデメリット

2つの仕組みをセットにしたものは、往々にして元々の2つのデメリットも踏襲します。
買取保証のメリットは、以下の2点になります。

  • 仲介で売れないリスクがある
  • 売却までのプロセスが不透明となる

1つ目は、仲介で売れないリスクがあるという点です。
買取保証は、結局のところ、「ダラダラした買取」になる恐れがあります。

最終的に買取となった場合、結局は「長い時間かけて安く売っただけ」と思えなくもないわけです。

普通の買取なら、即金・即売でパッと売ることができます。
しかしながら、買取保証は仲介の期間があるため、すぐには売れません。

最終的に買取になってしまうと、「なんだ、これなら最初からさっさと買取にしておけば良かった」と後悔することがあります。

最後は売却できるという安心感はあるものの、結局は、「長い時間をかけて買取を実行しただけ」という感じにもなりかねないのです。

2つ目は、売却までのプロセスが不透明となるという点になります。

買取保証は、通常、不動産会社と専属専任媒介契約または専任媒介契約を締結することが条件です。

専属専任媒介契約や専任媒介契約では、その不動産会社が1社独占で仲介を行うことになります。
うがった見方をすると、もしその不動産会社がわざと仲介の手を抜けば、確実に買取に持ち込むことができます。

良い物件の場合、不動産会社は仲介を行うよりも買取を行った方が儲かります。
そのため、良い物件ほど、わざと仲介の手を抜き、買取に持ち込むことで、不動産会社は多くの利益を稼ぐこともできるのです。

このように、買取保証では、不動産会社のことを疑い始めると、どんどん疑心暗鬼になっていきます。

「わざと仲介の手を抜いているのではないか?」と疑いだしたら切りがなく、売却までのプロセスが不透明な感じがしてしまうのがデメリットです。

2.買取保証の相場

2-1.買取金額は市場価格の80~90%程度

買取保証の相場は「市場価格の80~90%」といったところです。

買取保証はほとんどの不動産会社が上限額の設定を仲介による売却価格(市場価格)の90%と設定しています。

この設定はあくまでも「上限額」なので、常に市場価格の90%で買い取ってくれるわけではありません。

一方で、単純な買取の相場は、市場価格の80%が目安です。
単純な買取でも、ほとんどリフォームせずに売却できるような優良物件なら市場価格の90%近くになります。

それに対して、修繕箇所が多い物件の場合、市場価格の50%程度となってしまうこともあります。

物件にもよりますが、単純な買取の相場は市場価格の50%~90%です。
買取保証も基本的には一般の買取と同じことを行っています。

よって、物件の条件がかなり悪い場合には、買取保証でも市場価格の50%くらいになることはあり得ます。

買取保証の相場としては、基本的には市場価格の80%程度が中心であり、良い物件であれば90%程度、悪い物件であれば50%程度と理解しておけば良いでしょう。

2-2.不動産会社は仲介よりも買取の方が儲かる

不動産会社は仲介よりも買取の方が儲かります

仮に不動産会社が買取の上限額である90%で買い取った場合、転売することで10%の利益が得られます。

10%の利益というのは、上限額90%で買い取ったときの利益率のため、買取の最小限の利益幅ということです。

一方で、通常、仲介の場合、仲介手数料は「取引額の3%+6万円(400万円超の取引の場合)」となります。

仮に売主と買主の両方から仲介手数料を取る両手仲介であれば、「取引額の6%+12万円」が上限額です。

仲介なら最大で「6%+12万円」ですが、買取なら最小で「10%」であるため、不動産会社にとっては買取の方が儲かることになります。

不動産会社も、買取をする以上、売れ残る在庫リスクを抱えます。
仲介なら不動産会社に在庫リスクは発生しませんが、買取なら在庫リスクが発生するため、リスクを負う以上は仲介よりも高い利益率がない限り買取を行わないのです。

ただし、売主からすると、買取の方が儲かるという仕組みは解せない点でもあります。
不動産会社が買取の方が儲かるのなら、仲介で売却できなかった場合、「わざと買取に誘導したのではないか?」という疑念が生じてしまうからです。

そのため、買取保証の買取は、あくまでも最終的な保険として捉え、売主としては仲介でなんとか売りきることに専念すべきなのです。

尚、買取保証では、仲介で売却できた場合には売主に仲介手数料は発生します。
それに対して、買取保証で買取となった場合には売主に仲介手数料は発生しません。

3.各社の買取保証サービスの比較

この章では、不動産各社の買取保証サービスについて紹介します。
大手不動産各社では、それぞれ独自の買取保証サービスを設けており、名称も「買換保証」や「売却保証」等となっています。


「野村の仲介+」:買換保証
「住友林業ホームサービス」:買取保証制度
「大成有楽不動産販売」:売却保証
「東急リバブル」:リバブル売却保証システム
「大京穴吹不動産」:買い取り保証サービス
「三井のリハウス」:売却保証
「長谷工の仲介」:売却保証
「住友不動産販売」:売却保証


各社の買取保証サービスを比較すると以下の通りです。
表中の「-」の部分については詳細条件が開示されていないため、掲載していません。

(調査時点:2019/06/23)

まず買取保証額の上限は90%としている会社がほとんどです。

買取保証の保証期間については、「野村の仲介+」が最長1年とずば抜けて長いです。
保証期間が長いと仲介の売却期間を長く取ることができるため、仲介で高く売却できる確率が上がります。

「東急リバブル」も最長6ヶ月までの保証期間があるため、条件としては良い方です。

また、「野村の仲介+」と「東急リバブル」には、買取で転売した利益を還元する利益還元制度を設けているのが特徴となります。

一方で、「三井のリハウス」と「住友不動産販売」は、ほぼ条件が同じです。
保証期間は3ヶ月であり、なおかつ、販売計画も決められてしまうため、一番自由度は低くなります。

また、マンションだけであれば、「大成有楽不動産販売」も買取保証を行っています。
「大成有楽不動産販売」は、保証期間が開示されていませんが、売出価格設定が自由にできるなどのメリットがあり、十分に検討する価値があります。

買取保証では、仲介の期間中に売却しきることが重要なので、不動産会社を選ぶ際は、仲介の販売実績も含めて検討することが重要です。

以下にオリコンが公表している「不動産仲介 売却 顧客満足度ランキング」を示します。
下表の中で、赤字で示した会社が買取保証サービスを行っている会社になります。

仲介による販売実績や条件を比較してみると、買取保証なら「野村の仲介+」が一番おススメです。

まず「野村の仲介+」は仲介での顧客評価も高いため、仲介で売り切れる確率が高いといえます。
おまけに買取保証でも保証期間が長く、利益還元制度等もあり、他社よりも条件が良いです。

また、マンションであれば「大成有楽不動産販売」、戸建てであれば「東急リバブル」あたりも仲介の評価が高く、なおかつ、買取保証の条件も比較的良いため、おススメといえます。

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4.利用上の3つの注意点

この章では買取保証を利用するにあたっての3つの注意点について解説します。

4-1.買取価格は必ず比較すること

買取保証を利用する際は、買取価格は必ず比較することが重要です。
買取保証は専属専任媒介等の契約を前提とするため、不動産会社を1社に絞る必要があります。

そのため、まず最終的な買取価格が一番高い不動産会社を選ぶことが大前提です。
最終的な買取価格が一番高ければ、万が一、買取の結果となったとしても、損を最小限に抑えることができます。

また、買取保証では、仲介で売り切った方が得であるため、「仲介の実績」と「買取価格」をバランス見ながら不動産会社を選ぶことが重要です。
いくら買取価格が高くても、仲介でしっかり売却できなければ意味がありません。

そこで、買取保証の比較検討をするなら、一括査定サイトのHOME4Uがおススメになります。

下表はオリコンの仲介ランキングの中で、どの会社がHOME4Uに登録されているかを示したものです。

HOME4Uには、「野村の仲介+」を始めとする「大成有楽不動産販売」や「住友林業ホームサービス」等の仲介の評価が高い多くの不動産会社が登録されています。

買取保証の金額を比較するなら、HOME4Uを使うのが良いでしょう。

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4-2.売出価格は高くし過ぎないこと

買取保証では、売出価格は高くし過ぎないことが重要です。

買取保証では、最終的に買い取ってもらえるという安心感はあるものの、やはり仲介で高く売却したいというのが本音だと思います。

仲介でしっかり売却するには、欲をかかず、売却価格は高くし過ぎないことがポイントです。

買取保証では、高い買取保証額を選択することは重要ですが、仲介の売出価格まで高くする必要はありません。

売出価格まで高くしてしまうと、結局は、「長い時間かけて安く売っただけ」という結果になってしまいます。

そのため、買取保証額とは分けて考え、売出価格は保守的に設定することが重要です。
仮に、売出価格を保守的に設定しても、買取保証額よりも高くしておけば、高く売れる結果となります。

不動産会社に当初高い金額からスタートするような販売計画を立てられてしまうと、知らない間に買取に誘導されてしまいますので、注意が必要です。
仲介では、最初から売れる金額で売る出し価格を設定することが重要となります。

例えば前章で紹介した「大成有楽不動産販売」は、売出価格を自由に設定できます。
下手に買取に誘導されないためには、「大成有楽不動産販売」のように自由に売出価格が設定できる会社の方が良心的で安全なのです。

尚、くれぐれも売出価格が自由に設定できるからといって、高く設定してはいけません。

買取保証では、仲介で決して無理な売出価格を設定しないことがポイントになります。
買取はあくまでも最終的な保証と考え、仲介で売却しきることに専念しましょう。

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4-3.仲介期間は3ヶ月以上とすること

買取保証では、仲介期間は3ヶ月以上とすることが重要です。

公益財団法人東日本不動産流通機による「首都圏不動産流通市場の動向(2018年) 」では、仲介で売却されるまでの平均を公表しています。

過去10年間の平均日数を見てみると、以下のグラフの通りです。

過去10年間の平均では、マンションが「71.5日」、戸建てが「88.9日」、土地が「95.9日」かかっています。
いずれにしても、仲介による売却では3カ月前後の時間が必要ということです。

そのため、買取保証において仲介で売り切るには、最低でも仲介の期間を3ヶ月以上で設定することが必要となります。

特に戸建てや土地などは、過去に売却の平均期間が3ヶ月を超えていることもありますので、3ヶ月で確実に仲介を終了させることは若干不安です。

「三井のリハウス」や「住友不動産販売」では、保証期間が3ヶ月であったため、条件としては厳しいといえます。
保証期間が短いと、仲介で売却しきる確率が下がるためです。

一方で、「野村の仲介+」は保証期間が最長1年であったため、仲介で売却しきる成功確率を上げることができます。
「野村の仲介+」や「東急リバブル」の条件が良いと解説したのは、保証期間が長いことが理由です。

仲介の売却期間はできるだけ長めに設定し、確実に仲介で売却できることを目指しましょう。

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5.買取保証に向いている人

買取保証に向いている人は、以下のような人たちです。

  • 離婚で不動産を売却する人
  • 相続した不動産を処分したい人
  • 買い替えでつなぎ融資を利用する人

単純な買取は、借金取りに追われて今すぐにでも売却したい人が使うイメージがあります。
今すぐに急いで売りたい人は、買取保証ではなく、買取を利用すべきです。

一方で、「特に急いでいないけど、最終的には確実に売却したい」という人もいます。
例えば、離婚で不動産を売却する人や相続した不動産を処分したい人などが該当します。

離婚による財産分与や相続の遺産分割など、単純な買取を利用するほど急いではいないはずです。
しかしながら、財産分与や遺産分割では、いつまでも売れないというのは困ります。

そこで、買取保証を利用すれば、確実に期限を切って売却することが可能です。
しかも、仲介でしっかり売ることができれば、財産分与や遺産分割で分けることの金額も増やせます。

高く売ることもでき、なおかつ、最終的な決着も付けることができる点が買取保証のメリットです。

また、買い替えでつなぎ融資を使う人は、買取保証を利用することが前提となります。
つなぎ融資とは、買い替えにおいて購入物件の代金支払いが売却物件の代金入金よりも先に来た場合など、一時的な資金不足を解消するために利用できるローンです。

つなぎ融資を使うと、買い替えで購入と売却のタイミングが狂ってしまったときも、柔軟に対応することができます。

つなぎ融資は、銀行が不動産会社の買取保証を担保にお金を貸してくれます。
「買取保証」と「つなぎ融資」はセットですので、買い替えでつなぎ融資を利用する可能性のある人は、買取保証を検討した方が良いでしょう。

つなぎ融資を利用する可能性のある人は、例えば以下のような人たちです。

  • 転勤などで引越しの期日が決まっている人
  • 新築物件への買い替えで購入の期日が決まっている人

つまり、売却物件に住宅ローンが残っている人でも、先に購入物件を買わなければならない事情がある人がつなぎ融資を利用する可能性のある人です。
購入物件を先に買う必要がある人にとっては、つなぎ融資と買取保証は便利なサービスといえます。

つなぎ融資については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
ぜひご参照ください。

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6.まとめ

以上、不動産の買取保証とは?相場やおすすめの会社・利用上の注意点を解説してきました。

買取保証は、「長い時間かけて安く売っただけ」としないためにも、仲介の期間内にしっかり売却することが重要です。

買取保証の相場は「市場価格の80~90%」程度となります。
買取保証を成功させるには以下の3点がポイントでした。

  • 買取価格は必ず比較すること
  • 売出価格は高くし過ぎないこと
  • 仲介期間は3ヶ月以上とすること

買取では、買取部分はあくまでも最終的な保証と考え、仲介で売却しきることに専念しましょう。

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