事業用定期借地の適正地代と保証金の考え方について

2016/11/20

こんにちは、今回は中小企業CREシリーズとして、事業用定期借地についての話題になります。

当社では、先日、個人の地主様の立場に立った事業用定期借地権の契約締結コンサルティングを行いました。事業用定期借地権で借りたいという企業は既に決まっていましたが、ニーズの主なポイントは「地代をいくらにしたら良いのか」、「保証金はいくらにすべきか」という点でした。

1.適正地代はいくらか

事業用定期借地権の場合、一般的には権利金の授受は発生しないことが多いです。権利金の無い借地権設定では相当地代を支払うことが通常です。相当地代とは、地代の定価のようなもので、いわゆる安く借りているという「借り得感」のない地代と言い換えることが出来ます。逆に安く借りるのであれば、「借り得感」があるため、そこには何らかの経済価値が発生し、それが権利金という形で表現されることになります。

では相当地代とはいくらかという点がポイントです、相当地代は年額で「更地価格の6%」が一つの目安となります。ここで更地価格とは何ぞやという点ですが、国税庁の方では「時価」としか言っていません。実務上では、わざわざ時価を求めるために鑑定評価を取得するのはもったいないため、更地価格を路線価と置き換えることが多いです。路線価であれば公表されているため、双方、納得感もあり、また借手が地代を抑えることができるため受け入れやすいというのが理由です。

2.適正保証金はいくらか

また意外と問題となるのが、事業用定期借地権で保証金をいくらにするかという点です。事業用定期借地では、貸主から返還されない権利金ではなく、貸主から返還される保証金を支払うことが一般的です。事業用定期借地は、借主が建物投資を行うため、よほどのことが無い限り、撤退リスクがありません。また原状回復も更地返還となるため、貸主のリスクはかなり低い事業と言えます。そのため、保証金は少なくても良いような気がします。

しかしながら、事業用定期借地権の貸主リスクとして、よく言われるのが、事業者の夜逃げです。事業者が夜逃げした場合、残された建物を貸主が壊すことになるため、取壊し費用相当額を保証金として要求したいという貸主がいます。保証金が取壊し費用相当となってしまうと、極端に保証金が高額となってしまうため、リスクと保証金の額があまりにもバランスが悪くなり、借主との間で揉めてしまいます。

3.個人は預かり過ぎに注意

そのため、事業用定期借地権では地代よりも保証金の方が、金額決定が難しいです。当社の方では、貸主が個人の場合、保証金はもらい過ぎないように勧めています。理由としては、事業用定期借地の場合、事業期間満了時には、たいてい相続が発生しており、敷金返還義務は相続人が負うことが多いからです。敷金を預かっているのは親であり、返還するのは敷金を預かっていない子供になります。そのため返還保証金が多額になると、相続人は、相続後、敷金相当を頑張って貯蓄しなければなりません。残存事業期間が長ければ、対応できますが、短いと子供が返還敷金を貯めることが出来ません。個人の場合、実は保証金を預かり過ぎる方がリスクはあるのです。

当社では、最終的に相続人の方には意見を聞きながら、現実的で妥当性のある金額を保証金として決定しました。結果、借手にも受け入れやすい金額となります。保証金の額は、一律に地代の何倍とかではなく、事業期間や地主の年齢等を加味しながら、相続人も交えて打合せを行うと、話が上手くまとまるのです。

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