郊外の賃貸物件は更地から購入すると成り立たないという不思議

2016/05/14

不動産の投資物件の中には不思議な存在があります。それは地方の投資物件です。地方の物件は、高い利回りで取引されていますが、土地代まで含めて考えると、地方の物件は相当安いという事実です。

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地方の物件は賃料も安く、要求利回りも高いため、土地から購入して賃貸事業を行おうとすると、収益性が合いません。以前、私は住宅系REITに賃貸マンションを開発転売するための用地仕入の仕事をしていましたが、地方の物件で土地から購入して賃貸事業が成り立つ物件というのは一つもありませんでした。

ワンルームマンションの建築費については全国どこでもほぼ同じです。賃料は地方へ行くほど低くなります。また投資家の要求利回りは地方へ行くほど高くなります。土地代は単純化すると「純収益÷利回り-建築費」で計算されます。そうすると、土地代をこの式で算出しようとすると、土地代が相当少額か、もしくはマイナスになるという現象が現れ始めます。実は更地から購入して賃貸事業が成り立つのは、都心の一部だけなのです。

一方で、地方にも賃貸物件は存在します。恐らく、地方の賃貸物件は、元々、土地を持っている企業や地主が、土地の有効活用の一環として建てたものがほとんどだと思われます。このような物件は、地主からすると、土地代はタダ同然です。投資に対するリターンは、建築費だけを考慮すれば足りるのです。

土地を含めて地方の収益物件を利回り計算で購入するということは、物件を相当安く購入していると言えます。例えば、元々持っていたタダの土地を、地価公示価格を参考にして値付けして、土地建物代を計算すると、恐らく元々の地主はかなり損をして土地建物を売却していることになります。

不動産のアービトラージの観点からすれば、このようにして手に入れた地方の収益物件は、いずれ更地にして売却すれば儲かるかもしれません。賃料収入で取壊し費用を貯め込み、入居者が抜けきったところで取り壊して、更地売却すれば理論的には儲かると思われます。但し、この方法は時間もかかり立退きリスクもあるため、お勧めはしません。

土地からの購入を考えると、そもそも郊外では賃貸事業は難しいと言えるのです。