全国の空室率は2013年時点で13.5%にも上ります。正直言って、年々空室対策の難易度も上がってきているのも事実です。そこで今回は小手先の空室対策テクニックではなく、大局的な空室対策の方向感について考えていきます。
空室率からするに、今の日本の住宅事情は供給過剰です。不動産賃貸業の難しいところは、需給の調整がタイムリーに進まないところにあります。通常、工業製品であれば、供給過剰になって売れなくなった製品は製造を取りやめることで供給量が調整されます。しかしながら、ワンルームマンションのような鉄筋コンクリートの建物については、一度供給されてしまうと50年程度は存続するため供給状態が続きます。
日本では、現在人口減少社会に突入していますので、今後、賃貸需要は減る方向です。一方で、住宅については、一度作られてしまうと、供給されっぱなしの状態が続くため、供給量はすぐには減りません。需要が減っているにもかかわらず、供給量が調整できないというのが賃貸住宅市場なのです。
供給過剰な商品というのは、何も住宅だけに限りません。むしろ最近、需給バランスが崩れた賃貸住宅は他の製品に比べると遅い方です。一般的に供給過剰な製品はどのような形で生き残り戦略をかけるかというと、差別化です。ターゲットを絞り込み、他社製品から差別化することで、新たな需要に応えています。
賃貸住宅においても、この考え方は応用できます。従来、賃貸住宅は万人受けを目指して建築されてきました。例えば30年前に建築されたマンションも、当時としては誰からも好かれるマンションのはずでした。しかしながら、誰からも好かれるマンションは、年月が経つといつの間にか誰からも好かれないマンションへと変わってしまいます。
このことから、今後の空室対策の方向性としては、ターゲットを絞り込んだ差別化リフォームがますます効果的になってきます。皆に好かれるマンションではなく、ターゲットが好むマンションにリフォームすることが、今後の空室対策の方向性なのです。