意外と知られていない立退きの難しさ。賃貸住宅の立退料の相場について

2016/05/26

不動産オーナーの方でも意外と知られていないのが「立退き」です。私は良く「築古のマンションを建替えたいんですけど・・・」という相談を受けることがあります。その際、必ず「立退きの目途はついていますか?」と確認します、立退きは難しいということを知らない方も多く、立退きの話をすると驚かれる方も多いです。

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実際、築古アパートでも、「建替えたいから出て行ってよ」と言うだけで、素直に出ていく入居者は居ます。実はこれはラッキーなケースです。このようなケースは入居者が本当に良い人か、無知かのどちらかの場合に当てはまります。

通常、賃貸人であるオーナーから入居者へ立退きを求めるには正当事由が必要となります。正当事由とは自分で使う必要がある場合など、自己使用の都合性と言われる理由が代表的です。例えば「建物が古くなったから出て行ってくれ」というだけでは正当事由としては不足しています。この場合、立退料を払うことによって、正当事由を補完するという形になります。

住宅の賃貸借の場合、ほとんどの賃貸借契約書が普通借家契約です。普通借家契約は契約期間が定められていても更新されるため、契約終了時に単純に出て行ってくれとはなりません。退去させたい時に、ごねられたら立退料を支払うことになります。

立退き料については、一般的な相場というものは存在せず、正直、ゴネ得の世界になります。一応、現在の賃料と移転先の賃料の「差額」を1~1.5年程度を補償し、さらに引越費用等も補助してあげる程度が一般的な目安ではあります。店舗については、これに営業権の補償も追加されるため、場合によっては億単位の立退き料となるケースもあります。

移転先の費用や引越費用というのが、どの程度かかるのか分からないため、立退料を事前に見込んでおくことは、難しい部分です。個人的には、賃貸マンションの場合は、1年分の賃料を立退料として見込んでおけば十分なのではないかと思っています。家賃を1年分ももらえたら、普通は喜んで出ていくはずです。

法外な立退料とならないためにも、普段から入居者と良好な関係を築いておくのが一番なのかもしれません。