金利の動きと不動産投資家の期待利回りの動きは連動しています。今回はこの金利と不動産の利回り関係について見ていきます。
ある投資家が1,000万円の自己資金を持っていたとします。この投資家が、NOI利回りが5%、物件価格1,000万円の物件に全額投資すれば、年間収益は50万円となります。
一方で、NOI利回りが5%、物件価格が3,000万円の物件があったとします。先ほどの投資家が2,000万円を金利1%で銀行から借りて投資を行います。物件のNOIは5%のため、物件から得られる年間収益は150万円です。また金利は1%のため2,000万円の支払金利は20万円です。元本返済額をひとまず考慮外とすれば、この投資家は2,000万円の借入をすることで、NOI150万円から支払金利20万円を控除した130万円を得ることができます。
つまり自己資金だけでは50万円しか得られなかった投資が、借入をすることによって130万円まで収益を上げることができるのです。これはレバレッジ効果と言われます。レバレッジ効果は、NOI利回りが金利よりも高いことが前提となります。金利とNOI利回りの差はイールドギャップとも言われますが、イールドギャップは大きければ大きいほど、このレバレッジ効果も大きくなります。
そのため、不動産投資家が収益物件に求める利回り感は金利に敏感に反応します。典型的な例がREITです。REITの分配金利回りは金利と連動性の高い10年物長期国債の利回りの動きとほぼ連動しています。
不動産投資家の利回りは、一般財団法人日本不動産研究所が半年に一度、投資家の期待利回りをアンケート調査して発表しています。この調査結果においても投資家が期待する利回りも金利の変動と連動しています。日本は、超低金利政策が続いているため、今のところ投資家の利回りも低い水準になっています。
金利が上がれば、投資家の期待利回りも上がるため、逆に物件価格は下がり始めます。価格動向を見極めるうえで、今後、金利の動きには注目です。