2025年も不動産価格はまだ上がる!金利上昇がビクとも影響しない理由とは?

2024/12/29

全国の不動産価格は、2013年から上がり始め、上昇傾向は10年超も続いています。
不動産の価格上昇はますます強くなっており、いよいよ実需から投資の世界へと変化してきました。

一方で、首都圏においてはマンション価格がかなり高騰しているため、郊外の実需は足踏みし始めています。
しかしながら、東京23区内のマンションは旺盛な投資需要に支えられており、価格上昇の勢いは止まりません。

2024年には金利が若干上がり始めましたが、2025年の不動産市況はどうなるのでしょうか。
この記事では、「2025年の不動産市況予測」について解説します。

この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役)
保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン・住宅ローンアドバイザー

1.上昇し続ける不動産

結論からすると、2025年の不動産価格も上昇が続くことが見込まれます。
理由としては、不動産の先行指標である株価がまだ上昇傾向にあるからです。

株価は不動産価格の先行指標と言われており、不動産価格は株価に1~2年遅れて動く特徴があります。

以下に、1975年から2024年までにおける過去50年間の土地価格と株価の値動きを示します。

出典:地価公示「国土交通省」、日経平均「日経平均プロフィルヒストリカルデータ

上図のグラフは、赤が日経平均終値、青が地価公示(全国全用途平均)の動きです。
直近の2024年は日経平均終値が約4万円となり、2023年を上回る形で終わりました。
過去の傾向を見ると、土地価格は株価に遅れて連動しますので、2025年の不動産価格も上昇傾向が続く見込みは強いです。

近年の不動産価格が上昇している理由としては、日銀が行っている低金利政策が大きく影響しています。
日銀は2013年頃から低金利政策を取っており、不動産価格もほぼ同じ時期から上昇しています。

なお、日銀の低金利政策に関しては、2024年3月に大きな動きがありました。
それは、マイナス金利解除という大きな方針転換です。
マイナス金利解除によって金利は少しずつ上がってきており、2025年以降も少しずつ金利は上昇していく見込みは高いといえます。

2.金利が上がっても不動産価格が上がる理由とは

低金利政策を背景に上昇してきた不動産価格は、金利が上がることで下がる可能性はあります。

ただし、不動産価格は高い金利によって最終的に下がるのであって、金利が少し上がっただけで下がるわけではありません。

金利が上がっても不動産価格が上がる理由としては、以下の2点があるためです。

2-1.総じて低金利であること

1つ目の理由は、金利は上がったといっても現状としては総じて低金利であるためです。
2024年12月時点では、変動金利は0.4~0.5%程度が相場となっています。

バブル時代においては、変動金利は最大8.5%まで上昇し、ようやくバブルが終焉しました。
バブル時代の8.5%に比べると、現状の金利はまだまだ低い状態です。

また、諸外国はインフレを抑えるために日本より高い金利を設定していますが、インフレはなかなか収まらない状況となっています。

過去のバブルや現在の諸外国の状況を踏まえると、現状の金利ではインフレを抑えるほど効力はないと考えられ、不動産価格はまだまだ上がると予想されるのです。

2-2.金融機関の融資姿勢が積極的であること

2つ目の理由は、金融機関の融資姿勢が積極的であるという点です。
2024年3月にマイナス金利が解除されたことで、銀行は以前よりも高い金利を付けて融資をできるようになりました。

その結果、融資による銀行の収益力は向上し、銀行は以前にもまして融資に積極的になっています。
融資を行うために定期預金の金利を上げ、預金を確保し始める銀行も出始めたくらいです。

融資姿勢が積極的になると、銀行は以前にもましてデベロッパー(不動産会社)やゼネコン(施工会社)に対して融資をするようになります。
デベロッパーやゼネコンは資金調達しやすくなることから、マンション開発等がますます行われていく見込みが高いです。

銀行の融資によって不動産市場にさらに資金が流入すれば、不動産市場における現金の価値が相対的に低くなります。
現金の価値が低くなるということは、逆に不動産等のモノの価値が上がることを意味するため、インフレが生じてさらに不動産の価格は上がっていくのです。

このように金利が上昇局面に入ると、金融機関の融資姿勢がますます積極的になるため、しばらくは金利上昇によって不動産価格も上がるという逆説的なことが生じます。

当面は高金利・高インフレの状態になる可能性も出てきており、不動産の買主にとっては相当に厳しい状況になりつつあります。

3.どうなる?2025年の不動産市場

この章では、2025年の不動産市場について、もう少し詳しく解説していきます。

3-1.金利は総じて低いまま

不動産価格を引き下げるにはかなり高い金利設定を行わなければいけませんが、恐らく金利は2025年も総じて低いままと考えられます。
理由としては、国の財政再建が遅々として進まないからです。

現在、物価高や円安が生じているにも関わらず、日本の金利が上げられない諸悪の原因は政府が国債を大量に発行していることにあります。

財務省の試算では、国債の金利を1%上げただけで、国の歳出の中で利払い費が8.7兆円も増えると試算されています。

2024年末に議論されていた「103万円の壁」では、7.6兆円の減収になることが話題となっていました。

7.6兆円の減収でも大きな問題として取り上げられていたくらいですから、利払い費が8.7兆円も増えることはさらに大きな問題なわけです。

現在、日銀は国債の金利を抑えるために、市場に売りに出ている国債を高く買うことで金利を低く抑える調整をしています。

これらはイールドカーブコントロールと呼ばれるものですが、イールドカーブコントロールは批判が多かったことから、日銀は2024年にイールドカーブコントロールは表向き止めることを宣言しました。

しかしながら、実際には日銀は国債の買い入れを継続しており、国債の金利は低く抑えられています。

国債の金利は住宅ローンの固定金利に影響しますので、国債の金利が抑えられている限り、固定金利もそれほど上がらないということです。

また、日銀が国債を買い続けるには、日銀の収益力が高いことが大前提です。
日銀は銀行の銀行であることから、日銀が政策金利を上げてしまうと銀行に対して支払う利息が増え、日銀の収益が悪化します。
そのため、日銀は収益力を維持するためにも、政策金利を上げることはできないのです。

日銀の政策金利は、住宅ローンの変動金利に直接影響することから、2025年は変動金利も大きくは上がらないと考えられます。

3-2.取引の中心が実需から投資に移行し始める

2013年以降の不動産価格の上昇は、低金利政策により住宅ローンの金利が安かったことから、実需による下支えが価格上昇の原動力となってきました。

しかしながら、近年は住宅価格が上がり過ぎたため、今後は実需ではなく投資による取引が価格上昇を引き起こす主たる要因となる可能性があります。

2024年は、既に郊外ではマンションの売買が足踏みし始める現象が出てきました。
例えば、当社のある千葉市では好立地の新築マンションでも完売まで竣工から1年近くもかかっている物件も登場しています。

2~3年前であれば、好立地の物件は売りに出すとすぐに即完していましたが、最近は新築物件でも完売まで時間がかかるという新たな動きが見られます。

千葉市のような郊外では、不動産市場は実需が取引の中心です。
東京23区のように投資目的の取引は少ないため、実需の限界点を知ることができるマーケットとなっています。

千葉市だけでなく、全国的にも実需中心の市場では住宅の売れるまでの期間は長期化するという現象が出始めました。

取引の中心が投資に移行すれば、郊外においてはマンションではなく土地の取引が旺盛になることも予想されます。
いわゆる、バブル時代に存在した「土地転がし」です。

土地転がしは、単に値上がり益を期待するだけの投資であるため、投資家は都市部だけでなく地方でも行うことができます。
2024年には、すでに全国のリゾート地の土地が海外の投資家に購入され、価格が上昇するという現象が見られました。
2025年以降は、投資家による土地投資が今まで以上の全国的に広がるものと予想されます。

3-3.為替の影響は限定的

為替に関しては、影響は限定的なものであると思われます。
新型コロナウイルスの流行以降、円安の影響もあり、海外投資家が日本の不動産を積極的に購入する動きが生じています。

しかしながら、海外投資家が日本の不動産を購入する現象は、円安になる前から見られました。
理由としては、円安になる以前から、そもそも日本の不動産は海外の不動産に比べると割安だったからです。

仮に円高方向に振れたとしても、日本の不動産が総じて割安であることには変わりはないため、海外投資家による日本の不動産投資は今後も続くと見込まれます。

また、外国人観光客も、新型コロナウイルスの流行以前から多く来ていました。
観光地では新型コロナウイルスの以前からホテル用地の需要が強く存在し、土地価格が上昇する動きがありました。

外国人観光客に関しても、多少円高に振れたとしても大きくは減少しないと考えられ、不動産価格に与える影響は限定的であると思料されます。

4.今後の注目ポイント

この章では今後の注目ポイントについて解説します。

4-1.ウクライナ侵攻の終結

2025年1月からトランプ政権が誕生することで、ウクライナ侵攻が終結する可能性も出てきました。

仮にウクライナ侵攻が終結すれば、ヨーロッパを中心に世界各国で生じているインフレが収まる可能性もあり、諸外国が金利を下げていくことが予想されます。

諸外国が金利を下げれば、現状の諸外国との金利差が原因で生じている円安が収まる可能性もあります。

円高方向に振れれば、一部の外国人投資家は日本の不動産市場から去るかもしれません。
ただし、外国人投資家による不動産購入や外国人観光客の増加は円安になる前から生じていた現象であり、円高に振れても影響は限定的であるものと予想されます。

4-2.日本の政権交代

石破内閣は少数与党であることから、内閣不信任案が可決されれば短命で終わってしまう可能性は考えられます。
総辞職に追い込まれ、選挙になった場合、政権交代も起こり得ます。

仮に立件民主党に政権が変わった場合、前回の政権時代の良し悪しは別として、財政再建に取り組むことは期待できます。

現在の日本は資本主義国家に関わらず、中央銀行がまともに機能しない致命的な状況です。
借金だらけのため、万が一の有事の際、戦費すら調達できない危険な状態ともいえます。
江戸時代の参勤交代で金を使わせられた藩ならいざ知らず、自ら作った財政難で弱くなってどうするのでしょうか?
財政再建は政治家しかできない仕事であるため、国を守り、柔軟性のある経済を復活させるためにもなんとか実行して欲しいところです。

政権交代によって財政再建が行われ、将来的に日銀が適宜金利を自由に上げられるような状態になれば、昨今の歪んだ不動産市場は是正されるのかもしれません。

4-3.世界を揺るがす金融ショック

将来のことは誰にも予測できませんが、もしリーマンショックのような世界を揺るがす金融ショックが生じれば、不動産価格の下落も考えられます。

金融機関が一気に融資姿勢を硬化させれば、貸し剥がしや貸し渋りによって不動産市場へ資金が流れなくなります。

その結果、不動産市場において現金と不動産のバランスが崩れ、デフレが生じて価格は下落していく可能性は高いです。

中国における不動産市場の停滞やウクライナ侵攻、中東情勢等が原因で何らかの金融ショックを引き起こす懸念は残っており、過度な楽観視はしない方が良いでしょう。

まとめ

以上、2025年の不動産市況予測について解説してきました。
株価の動向から、2025年の引き続き不動産価格は上昇していく見込みは高いです。
金利が上がっても価格が上がる理由としては、「総じて金利が低いこと」と「金融機関の融資姿勢が積極的であること」の2点が挙げられます。
投資や売却に関しては良い環境が続きますので、売却予定の方は好機を逃さず売って頂ければと思います。