昨今、アパートではサブリース会社に対するオーナーの集団訴訟も相次ぎ、シェアハウスではサブリース会社の倒産等の問題も生じています。
人口減少社会においては、サブリースという仕組み自体に無理があるため、今まで見えなかった問題が顕在化してきました。
サブリース契約は、もはやオーナーを安心させてくれる仕組みではなく、オーナーに大きなリスクを与えかねない契約です。
これからアパートやマンションを建築する人であれば、サブリースの問題点をしっかり認識する必要があります。
そこで、この記事では「サブリースの問題」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたはサブリースの問題と対処法について理解できるようになります。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役) 保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン |
目次
1.サブリース契約の仕組みと儲けのカラクリ
最初にサブリース契約の仕組みと儲けのカラクリについて解説します。
サブリース契約とは、転貸借契約のことです。
建物オーナーは、サブリース会社と賃貸借契約をし、サブリース会社が各入居者と転貸借契約をすることで、管理も担う管理方式となります。
通常の管理方式では、オーナーは各入居者と直接賃貸借契約を締結し、管理会社に対し管理料を支払うことで管理を委託します。
管理委託料は家賃の5%程度が相場です。
管理委託方式では、空室が発生すると、その分、賃料収入が減ります。
一方で、サブリースの場合には、オーナーは入居者とは直接賃貸借契約を締結せず、賃貸借契約書はサブリース会社との1本のみであることがポイントです。
サブリースには「家賃保証型サブリース」と「パススルー型サブリース」の2種類があります。
家賃保証型サブリースは、空室が発生しても固定の賃料が振り込まれるサブリースです。
建物オーナーに入ってくる賃料は、満室想定賃料の83%程度が相場となります。
パススルー型サブリースは、空室に応じて賃料が変動するサブリースです。
建物オーナーに入ってくる賃料は、入居中の賃料から5%程度差し引かれた賃料が振り込まれるのが相場となります。
「サブリース」という名称は、いずれにしても転貸借方式による管理です。
法律上、サブリース会社は「借主」という立場になります。
通常の管理委託では、管理会社は「受託者」という立場ですが、サブリース会社は借地借家法上の「借主」であることがポイントです。
また、アパート等を建てると、通常はハウスメーカーの子会社がサブリース会社となります。
アパート建築ではサブリース会社の指定が条件であることが多いため、オーナーはサブリース会社を選べません。
さらに、サブリース会社はメンテナンス会社も指定してきます。
メンテナンス会社もハウスメーカーの子会社であることが多いです。
ハウスメーカーは、サブリース会社とメンテナンス会社の2つを持つことで、建築時だけでなく、竣工後もオーナーから収入を得る「儲けのカラクリ」が構築されています。
「建築」と「管理」、「修繕」の3つて儲けることのできるビジネスモデルとなっているのです。
この儲けのカラクリも、オーナーにサブリース会社やメンテナンス会社の選択権を与えないことから、様々な問題を引き起こす原因となっています。
2.サブリースの問題点
ここからは、サブリース契約の中でも特に問題が多い「家賃保証型サブリース」のことを「サブリース」と称して解説していきます。
2-1.収益性が低い
サブリースは収益性が低いという点が最大の問題点です。
建物オーナーに入る賃料は、満室想定賃料の83%程度となります。
低い収益性を前提に借入金の返済計画を組むと、少しでも家賃が下がると返済が苦しくなり、賃貸経営が破綻します。
余裕のない賃貸経営となると、キャッシュも溜まらず突発的な支出にも対応できません。
サブリース賃料が満室想定賃料の83%とすると、17%の管理料を払っていることに相当します。
管理委託方式であれば管理料は5%程度ですので、オーナーは3倍以上の手数料を払っていることになり、相当に損をしていることになるのです。
2-2.賃料は減額される
サブリースは、賃料が永久保証されるのではなく減額されるのが通常です。
家賃保証や空室保証と謳われていますが、永久保証はされません。
理由としては、サブリース会社は借地借家法上の借主であるためです。
借地借家法は、本来的に弱い立場にある「借主」を守るための法律ですので、借主の権利が強く守られています。
借地借家法32条では、借主からの賃料減額請求権を以下のように規定しています。
(借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし,一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には,その定めに従う。
借地借家法では、「契約の条件にかかわらず」賃料の増減を認めていることがポイントです。
例えば、サブリース契約書の中に「10年間賃料は固定するものとする」とか、「賃料は毎年1%ずつ増額させる」と規定を定めていても、賃料減額が認められます。
借地借家法32条は「強行法規」と呼ばれている規定であるため、当事者間で条文とは異なる契約を締結すると無効です。
良くあるケースでは、サブリース契約の中に「10年間賃料は固定」と定めていても、竣工から5年目に賃料減額要求を受けるというような場合、「話が違う」ということでトラブルとなります。
サブリース会社は借主ですので、10年間賃料は固定という契約条件に関わらず3年目に賃料減額を要求してきたとしても、その主張は認められるのです。
借地借家法がある以上、貸主としては賃料減額を防ぐ手立てはありません。
どんな契約をしたとしても、借主からの賃料減額要求は防げないと理解しておくことが必要です。
尚、サブリース契約について特約の有効性については、以下のようになります。
※基礎的事情とは、バブル時代のような毎年のように不動産価格が高騰していく事情を指します。
現在においては、基礎的事情は存在しないと考えられ、自動増額特約は有効ではないと解されています。
一方で、借地借家法は借主を守る法律ですので、不増特約のような借主に有利な特約は有効です。
サブリース会社は法律上、守られるべき借主であるということを十分に理解しておきましょう。
2-3.修繕とセットになっている
サブリースでは、メンテナンス会社の指定が条件となっていることが多く、修繕とセットになっているという点が問題です。
メンテナンス会社も、通常はハウスメーカーの子会社となります。
メンテナンス会社が指定されていることから、建物オーナーは工事内容や工事業者も選ぶことができません。
修繕費が割高となっても、削減する手立てがなく、費用が余計に生じるという点がデメリットです。
一方で、オーナーにとってはハウスメーカーの子会社がメンテナンスも行ってくれれば、楽ですし、安心できるというメリットもあります。
そのため、修繕費が多少割高でも、ハウスメーカーの子会社にメンテナンスをお願いしたいという人も多いです。
ただし、サブリースとメンテナンスはセットになっていることが多く、メンテナンスだけをハウスメーカーの子会社とするようなことを、ハウスメーカーが認めないことが良くあります。
オーナーからすると、メンテナンスが人質に取られているような側面があり、半ばサブリースが強要されることもあるのです。
2-4.解約しにくい
サブリースは解約しにくいという問題点があります。
サブリース会社は借地借家法上の借主の立場ですので、解約はいわゆる「立ち退き」に相当します。
借地借家法は借主の権利を強く守っていますので、借主が「出ていきたくない」と主張すれば、その主張が通ってしまいます。
仮に借主を立ち退かせたい場合には、立ち退き料が必要です。
借地借家法28条では、貸主からの契約解除を以下のように規定しています。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
サブリース会社を立ち退かせるためには、「正当事由」と呼ばれる正当な理由と「立ち退き料」の2つが必要です。
例えば、毎年のように賃料減額を要求してくるサブリース会社を解除したいと思っても、簡単に解除することはできません。
管理会社の切り替えが容易ではないという点がサブリースのデメリットです。
2-5.入居者募集能力が高いとは限らない
サブリース会社は入居者募集能力が高いとは限らないという点も問題です。
通常の管理委託では、空室が発生すると管理会社が入居者募集を行い、空室を埋めていきます。
街の不動産会社が管理会社の場合には、管理会社が自力で入居者を探し、契約を決めることが多いです。
入居者募集能力が高い不動産会社に管理を委託すると、空室が発生してもすぐに入居が決まります。
一方で、ハウスメーカーが指定するサブリース会社は、街に営業店を構えているような会社は少ないです。
このようなサブリース会社は、空室が発生すると街の不動産会社に一気に情報を流し、街の不動産会社に入居者を決めさせます。
サブリース会社は、他力本願的に入居者を決めることが多く、自らの入居者募集能力は決して高くないことが多いです。
また、通常の管理委託の場合、アパートオーナーが不動産会社にAD(広告宣伝費)を積み増しして、自分のアパートに入居者を誘導するような対策も行うことができます。
サブリースは、転貸ですのでADを駆使した空室対策がやりにくいのもデメリットです。
3.サブリースのトラブル事例
この章ではサブリースのトラブル事例について解説します。
3-1.しつこい営業がある
サブリースとは直接関係ありませんが、サブリース契約を条件としてハウスメーカーからしつこい営業を受けるというトラブルが良くあります。
「サブリースの一括借上げだから安心してアパート経営ができる」ということを謳い文句に、高齢者が狙われるトラブルが多いです。
高齢の父母が相続対策としてアパートを建てるように強く勧誘されており、息子が心配して何とか断らせようと親子で揉めることもあります。
契約する以前の問題ですが、サブリースを盾に無理矢理オーナーを納得させようとすることが営業手法は多いです。
サブリースは決して安心を与える材料ではないので、「サブリースだから大丈夫だ」と誤認することは避けるようにしてください。
3-2.毎年のように家賃減額交渉が続く
サブリースの典型的なトラブルは家賃減額交渉です。
毎年のように家賃減額交渉が続き、オーナーがノイローゼとなってしまうこともあります。
良くある例としては、「10年間は賃料減額ができないこととする」といった特約を結んだにも関わらず、その間に減額交渉があるというケースです。
借地借家法では、「借主が賃料減額できない」という特約は無効ですので、残念ながらこのような賃料不減特約を締結しても効果はありません。
サブリース会社は、賃料不減特約は無効であることを知っていますので、平気で特約を締結して、平気で特約を破ってきます。
減額に一度応諾すると、毎年のように減額交渉が行われ、年々条件が悪くなっていくようなこともあります。
家賃減額は契約では防げない内容ですので、「家賃減額は必ずある」と認識した上で契約するようにしてください。
3-3.家賃が入金されなくなる
サブリースでは家賃減額を通り越して、サブリース会社からの家賃が入金されなくなるといったトラブルもあります。
かぼちゃの馬車事件を起こしたスマートデイズは、破産する直前は賃料の不払いを生じさせました。
サブリース賃料を前提に借入金の返済計画を立てていたオーナーの中には、自己破産を余儀なくされた人もいたようです。
サブリースの場合、入居者が入っていたとしても、サブリース会社から賃料が振り込まれない限り、オーナーの賃料収入はゼロとなってしまいます。
サブリースは、賃貸借契約がサブリース会社との1本の契約のみであることから、形態としては1棟貸と変わりがありません。
1棟貸でテナントが賃料を不払いしたら、収入はゼロとなります。
1棟貸では、そのようなことが起こらないように、テナントの信用力(与信)の調査が重要なポイントとなります。
サブリースでも、与信の低い企業がサブリース会社となると、賃料不払いの問題も起こり得ます。
不払いを避けるには、経営母体がしっかりしたサブリース会社と契約することが必要です。
3-4.サブリース会社が倒産する
サブリースでは、最終的にサブリース会社が倒産することもあります。
かぼちゃの馬車事件のスマートデイズは、サブリース会社が倒産したケースです。
サブリース会社が倒産するようなケースは、その前に家賃不不払いが生じることが多いので、オーナーは既に大きな被害を受けていることになります。
倒産リスクを回避するには、やはりサブリース会社の与信をしっかり調査することが必要です。
今のところ、大手ハウスメーカーが建設するアパートの場合、サブリース会社が倒産するといったトラブルはありません。
倒産のような問題は、シェアハウスのような大手のハウスメーカーが手掛けない部類の不動産で生じました。
大手のハウスメーカーが手掛けない領域では、特に経営母体が脆弱なサブリース会社が多くなるため、十分に注意した上で契約する必要があります。
4.サブリース契約の判例
サブリース会社からの賃料減額交渉は認めらえるという点に関しては、既に司法の場で決着がついています。
ここで、サブリース契約における重要な判例についてご紹介します。
- サブリース契約と賃料減額請求(最高裁平成15年10月21日第3小法廷判決)
本件は、サブリースも賃貸借契約であり、借地借家法32条により賃料の減額請求は可能であるとした判例です。
この事案では、サブリース会社がオーナーに対して賃料減額を要求しましたが、オーナーが応諾しなかったため、サブリース会社が減額した賃料を振り込んだことが事件のきっかけでした。
オーナーは減額された賃料を不服として、サブリース会社を訴えた事案です。
この判例が出される以前は、サブリース契約は同契約の持つ共同事業的性格から借地借家法の適用の有無が議論されていました。
しかしながら、この判例では共同事業の一環としてのサブリース契約であっても、賃貸借契約の性質を有することは否定できず、理論的に賃料減額請求権の行使を認めるのが相当であるという考えを始めて最高裁が示しました。
本判決では、サブリース契約においても借地借家法32条が適用されるものと判決しています。
本判決によって、サブリース契約は賃貸借契約であることが明確となり、サブリース会社も堂々と賃料減額請求できるようになりました。
その後、本判決をきっかけに、平成15年から平成17年にかけてサブリースに関する重要な判例が相次いており、司法の判断はほぼ固まったといえる状況です。
【サブリースに関連する最高裁判例】
- 賃料自動改定特約と賃料減額請求 最高裁平成15年6月12日第1小法廷判決
- 賃料保証特約 最高裁平成15年10月23日第1小法廷判決
- 消費者物価指数による賃料改定特約 最高裁平成16年6月29日第3小法廷判決
- 業務委託協定 最高裁平成16年11月8日第2小法廷判決
- オーダーリース 最高裁平成17年3月10日第1小法廷判決
近年では再びオーナーがサブリース会社を集団で訴える等の訴訟が相次いていますが、サブリースに関する問題は既に司法で決着がついており、今更覆すのは難しいのではないかと考えられています。
よって、オーナーとしては、サブリースは賃貸借契約であり、サブリース会社は守られるべき立場の借主であることを、十分に認識する必要があります。
サブリースは過去に何度も裁判となり、司法の判断も固まっていますので、家賃減額は防げないということを認識した上で契約することが重要です。
5.トラブル回避の対処法
最後にサブリースのトラブル回避の対処法について解説します。
5-1.サブリースを利用しない
サブリースの最も確実なラブル回避の対処法は、サブリースを利用しないということです。
そもそもサブリースをしないと不安を感じるような立地では、賃貸経営をしてはいけません。
賃貸経営は、サブリースなどしなくてもやっていける条件の立地で行うのが原則です。
サブリースはマジックではないので、立地が悪いところではサブリース会社も入居者募集に苦戦します。
入居者募集に苦戦すれば、すぐに賃料減額交渉となるため、結局のところ賃貸経営は上手くいかないのです。
サブリースは、「十分に賃貸経営が可能だけれども、あまり面倒なリスクは取りたくない」という場合だけに向いています。
サブリースは、あくまでもサブリースを利用しなくても賃貸経営ができる場所でオプション的に選択すべきものであり、賃貸経営が不安な場所で選択してはいけません。
尚、サブリースについては、国土交通省と消費者庁、金融庁が連名で利用の注意喚起を促しています。
- 国土交通省・消費者庁・金融庁によるサブリースの注意喚起
「アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!」
国がわざわざ利用の注意喚起をしているくらいですので、無理な利用は避けるようにしましょう。
5-2.過剰な融資を受けない
どうしてもサブリースを利用する場合は、過剰な融資を受けないようにしてください。
サブリースは収益性が低いので、家賃が減額されると返済計画にすぐに支障をきたします。
極端な話、借入金がゼロであればサブリースに大きなリスクはありません。
借入金が多いと、ギリギリの返済計画となってしまうので、サブリースのリスクがすぐに顕在化するのです。
過剰な融資を受けないようにするには、とにかく建築費を圧縮することが重要です。
建築費を効果的に圧縮するには、ハウスメーカーの見積比較を十分に行うことが最も効果的です。
ハウスメーカーの見積比較は、「HOME4U土地活用」の無料一括相談サービスを利用することをおススメします。
複数のハウスメーカーに価格競争させるは最大の牽制球となりますので、サブリースの条件も含めて良い条件のプランを見つけることができます。
「HOME4U土地活用」は、登録企業に大手ハウスメーカーが多く、まともな見積比較サービスです。
建築費の圧縮は、無駄な借入を避ける最大の効果を生みますので、建築前は必ず複数のハウスメーカーに見積比較するようにしましょう。
5-3.サブリース会社の与信を調査する
サブリース会社の与信を調査することも重要です。
与信調査は個人で行うことは難しいので、取引先の銀行に聞いて見るのが一番良い方法です。
表立って教えてくれませんが、「今度こんな計画を考えているが、○○社ってどうなの?」と聞くと、こっそり教えてくれます。
銀行にも融資のチャンスがある話なので、比較的協力的になってくれることが多いです。
与信調査は、融資姿勢が厳しめの銀行にヒアリングすることをおススメします。
スルガ銀行のような例もありますので、融資姿勢が緩い銀行は裏でサブリース会社と繋がっている可能性があるからです。
融資姿勢が厳しい銀行なら、まっとうな判断を下しますので有益な情報が得らえます。
また、融資も本来なら融資姿勢が厳しい銀行でも審査が通るような計画内容で投資することが望ましいです。
5-4.オーナーからの解約権を確保する
サブリース契約はオーナーから解約しにくいため、契約書の中に「オーナーからの解約権」の条項を入れておくことがポイントです。
ただし、サブリースの賃貸借契約においては、オーナーから解約できる条項を入れておいても、その条項は無効です。
「10年間は賃料を減額できないものとする」等の条項と同じで、条文を加えても裁判で争えば無効となる条項になります。
争いに発展すると、借主を退去させるには「正当事由」と「立ち退き料」が必要です。
しかしながら、契約書に条文を入れておくだけで、オーナーとしては解約したいと思ったときに話のきっかけとすることができます。
サブリースは解約しにくいことが、サブリース会社からの一方的な賃下げ要求を生む原因となっています。
借主であるサブリース会社は、法律上守られる存在であるため、オーナーに対して強気の交渉ができるのです。
サブリース会社とオーナーが少しでも対等な関係になるように、契約書の中にオーナーからの契約権を入れておき、心理的に牽制しておくことに効果があります。
5-5.賃料減額に応じない
サブリース会社から賃料減額要求があっても、賃料減額に応じないことが基本的な対処法です。
確かに借地借家法では借主であるサブリース会社に賃料減額交渉をする権利を認めてはいますが、賃貸人(オーナー)が応諾する義務を定めているわけではありません。
通常の賃貸借では、借主が賃料を下げて欲しいと言ってきても、賃貸人が拒否することは良くありますので、サブリースでも拒否すれば良いのです。
一方で、通常の賃貸借では、「テナントに出ていかれたら困る」ということで、賃貸人が減額要求に応諾することは良くあります。
しかしながら、サブリース契約は転貸借契約ですので、間に入っているサブリース会社が退去しても、転貸人が残ります。
サブリースは下図のような「達磨落とし」のイメージですので、サブリース会社が抜けたとしても、その後はオーナーと入居者が直接賃貸借契約を締結する関係となり、収入が亡くなることはないのです。
むしろ、オーナーは転貸借契約の条件をそのまま引き継ぐことができるため、サブリース会社が抜けることで収入が増えます。
よって、賃料減額交渉があったとしても、オーナーは強気で交渉が可能であり、サブリース会社が退去すれば、むしろ収入は増えることになるのです。
サブリース会社との交渉は、全く弱気になる必要はありません。
筆者はサブリース会社からの賃料減額交渉に何度も立ち会っていますが、頑なに拒否しても、その後も全く問題なくサブリースが継続されていることが多いです。
サブリース会社にとっては、賃料減額交渉がルーティンワークのようなものですので、相手が根負けするまで拒否することがコツです。
本当に嫌であれば、サブリース会社が退去するだけなので、ドライに考えて対応するようにしてください。
代替の管理会社はいくらでもあります。
サブリース会社からの減額要求が激しい場合には、事前に新しい管理会社を探しておくことをおススメします。
管理会社も「賃貸経営HOME4U」の無料一括相談サービスによって見つけることができます。
「賃貸経営HOME4U」には、入居者募集能力の高い管理会社が多く登録されています。
管理会社を入居者募集能力の高い会社に切り替えることは、最大の空室対策に繋がります。
管理会社の切り替えは良く行われることですので、サブリース会社からの減額要求がしつこい場合には、切り替えてしまうのが適切な対応といえます。
賃料減額要求に応諾する義務は全くないということを、しっかり理解しておきましょう。
6.まとめ
以上、サブリースの問題について解説してきました。
サブリースとは、転貸の管理形式であり、オーナーはサブリース会社と賃貸借契約を締結しています。
サブリース会社は借主であり、借主は借地借家法で守られるべき存在です。
借主からの賃料減額交渉権は認められ、オーナーに賃料減額交渉権を排除する手立てはありませんが、オーナーには減額要求を応じる義務もありません。
サブリース契約を利用する場合には、借主と貸主という法律関係をしっかり理解した上で、慎重に契約するようにしてください。