収益価格を求める上での利回りは曖昧で変化するものなのです

2016/06/01

不動産の鑑定評価では、コスト面から試算する積算価格と、事例から試算する比準価格、収益性から試算する収益価格の3つを基本として求めます。この3つの中で、収益物件の価格は収益価格を重視して価格が決定されます。

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収益価格は、一見すると理論的に価格を求めているようですが、実はその求める過程において「いい加減な部分」が存在します。それは利回りです。収益価格は、単純化すると収益を利回りで割った価格です。

ここで収益というのは賃料収入から費用を差し引いた純収益になります。純収益は、実際の賃料や費用をベースに求めるため、それほどいい加減な数字には成り得ません。問題なのは、利回りです。

利回りはパーセントの単位であるため、とても小さい数字です。「収益価格=純収益÷利回り」という関係式を見ると、大きい数字である純収益を、とても小さいパーセント単位の利回りで割って価格を求めます。つまり分母の数字がとても小さいため、その利回りのちょっとした数字の差で価格が大きく変化してしまうのです。

例えば、純収益を100とした場合、利回りが5%なら価格は100÷5%=2,000です。利回りが4%なら価格は100÷4%=2,500となります。わずか1%の違いで価格が25%も異なってしまうのです。

そのためこの利回りは価格決定に当たりとても重要なのですが、じつはこの利回りを完全に理論的に求めることは出来ません。借入金と自己資金に係る利回りから求める方法などもありますが、結局、自己資金に係る利回りというのが曖昧なまま決定されます。

実は、不動産投資家が求める利回りというのは、「妄想」に過ぎません。このくらいであって欲しいという感覚的な「期待」が終結したものです。その期待は金利が上がれば上がりますし、金利が下がれば下がるという非常にあいまいなものなのです。

日本の不動産の利回りというのは、なんとなく4~5%の間が適当という妄想や期待の中で決まっています。明確なものではなく、とても曖昧で、しかも変化するものなのです。