マンションや戸建ては住みながら売却することも可能です。
住みながら売却する場合には、一番ポイントとなるのが「内覧」になります。
内覧とは、マンションや戸建ての売却において、実際に建物の内部や外部を購入希望者に案内する販売行為のことです。
内覧会とも呼ぶ場合があります。
内覧は、上手くやったからと言って必ず高く売れるものではありません。
しかしながら、手を抜くと「なかなか売れない」、「大きく値引交渉を受ける」等の影響が出てくる厄介な仕事です。
そのため、内覧はしっかりと準備をし、きちんとした対応をすることが必要です。
そこで今回の記事ではマンションや戸建てを高く売却するための内覧の対応方法について解説致します。
この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役) 保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン |
目次
1.内覧と内見の違い
内覧も内見も、購入や借りる前に物件を実際に見る行為なので、意味は基本的に同じです。
ただ、日本語的に「内覧」の場合は、「内覧する」とは使わず、「内覧を催す」というような使われ方が多いです。
つまり、内覧という言葉を使う主体は売主や貸主となります。
それに対して、「内見」の場合は、「内見を催す」とは使わず、「内見する・内見したい」というような使われ方が多くなります。
つまり、内見という言葉を使う主体は買主や借主になります。
内覧 ・・・ どちらかというと売主や貸主が使う言葉 内見 ・・・ どちらかというと買主や借主が使う言葉 |
そのため、売主が行う行為としては「内覧」となり、買主が行う行為としては「内見」となります。
ただ、デジタル大辞泉(小学館)によれば、それぞれ互いの言い換え言葉で登場しますので、言葉の意味としては同じです。
デジタル大辞泉(小学館)
「内覧」とは内々で見ること。内見。 「内見」とは内々で見ること。内覧。 |
よって、売主が内見と言っても、買主が内覧と言っても特に間違いはありません。
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2.内覧とは
マンションや戸建てを売却する場合、購入希望者に家の中を見てもらう行為を内覧と呼びます。
中古住宅は何千万円もする高価な買い物であるため、一回も見ずに買うということは基本的にありません。
内覧はマンションや戸建ての売却の中で必ず発生する仕事です。
内覧は、「引越後に行うパターン」と「住みながら行うパターン」の2種類があります。
「引越後に行うパターン」であれば、家は「がらんどう」の綺麗な状態であるため、ほとんど問題がないといえます。
鍵を不動産会社に預けておけば、内覧対応は不動産会社に任せることもできます。
「引越後に行うパターン」の内覧は、売りやすく、不動産会社に任せることができるため対応も楽であるというメリットがあります。
一方で、問題となるのが「住みながら行うパターン」の内覧です。
「住みながら行うパターン」であれば、家は「家財道具や日用品」が散乱し、生活感や雑多感に溢れ、家の印象が悪くなるという問題が発生します。
また、売主自ら内覧対応をしなければならず、手間がかかります。
売却が終わるまでは、毎週のように土日が内覧対応で追われ、精神的な負担もかかります。
販売活動を開始すると、例えば金曜の夕方に急に不動産会社から連絡があり、「明日、内覧希望のお客様がいるのですが、大丈夫ですか?」というような連絡が入ります。
このような連絡が入っても、「ハイ、大丈夫です」と答えられるようにするには、しっかりとした準備をしておくことが重要です。
準備をしておかないと、金曜の夜、夜な夜な大掃除をし始めて、毎回バタバタして対応するということにもなりかねません。
「住みながら行うパターン」の場合は、内覧を行う前の事前準備がとても大事になります。
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3.内覧までの準備
内覧までの準備としては、主に以下の5つを行います。
1.モノを捨てる 2.ハウスクリーニングを実施する 3.付帯設備表・告知書を完成させる 4.内覧担当者を決めておく 5.周辺環境の話題を用意しておく |
3-1.モノを捨てる
1つ目として、マンションや戸建ての売却を決めたら、まず家の中の不要なモノ捨てることをおススメします。
内覧時に、「残念な印象」を与える最大の原因は、「溢れたモノ」にあります。
床や机の上のホコリや傷は、大きな悪影響を与えません。
購入希望者が、「うわっ」と引いてしまうのは、溢れまくった生活感です。
ソファーやテーブルの上がぐちゃぐちゃ、タオルや毛布・新聞雑誌・段ボールが散乱している、棚の上にモノを置きまくっている、冷蔵庫や壁に紙を貼りまくっている等々は、マイナスの印象を与えます。
極端な例を言えば、「汚部屋」は誰も購入したいと思いません。
汚部屋のような印象を与える最たる要因は溢れたモノにあります。
一旦、不要なモノを捨てておけば、家はかなりスッキリ見せることができます。
内覧の前に毎回バタバタ家の掃除をしなくても、美観を保つことができるというメリットがあります。
そのため、売却を決めたら、内覧に向けて家の中の不要なモノを捨てるようにしましょう。
尚、捨てられないモノが多い場合は、物置やトランクルームに片付けておきます。
物置やトランクルームが入りきらない場合には、実家に避難させる等の対応を取って下さい。
内覧の準備の中でモノを捨てる行為が、家をきれい見せる効果が一番あります。
大量のモノを捨てるにはとても時間がかかります。
しかしながら、売却すればいずれかなりのモノを捨てることになります。
早めにモノを捨てておけば、引越時も楽になりますし、内覧にも効果が出ます。
モノを捨てるには、費用も時間もかかります。
売却の決心がついた段階で、モノはさっそく捨てるようにしましょう。
3-2.ハウスクリーニングを実施する
2つ目の準備としてハウスクリーニングの実施があります。
ハウスクリーニングは査定には影響しませんので、査定の後、かつ、内覧の前に実施するのでOKです。
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ハウスクリーニングとは、プロの清掃業者による家の掃除を指します。
日常の掃除では落としきれない汚れやカビ、臭いの原因となる部分など、徹底的に掃除をして綺麗にしてくれます。
内覧では、購入希望者は特に水回りについて重点的に見ます。
水回りを気にする人は購入希望者の奥様ですので、特に細かい部分まで観察されます。
水回りとは、キッチンや、バス、洗面所、トイレのような住戸内で水を使う部分です。
水回りは、ミズアカやカビが多く発生しており、不衛生な印象を与えます。
毎日見ている人には気にならなくても、他人が見ると目につくことも多いです。
ミズアカやカビについては、しっかりと落とすようにして下さい。
また、コンロについては油汚れや換気扇のホコリも溜まっており、素人ではなかなか汚れを落とせません。
コンロ・換気扇周りは、パッと見てかなり汚く感じますので、しっかり綺麗にしておきます。
さらに、トイレの臭いも悪い印象を与えます。
臭いの原因は、こびりついた汚れですので、ハウスクリーニングをすると、かなり臭いも除去できます。
その他、フローリングやクロス、玄関等は気になる汚れがある部分は、適宜、実施するようにしてください。
ハウスクリーニングはクリーニングを行う箇所によって料金が異なります。
部分別の料金相場は以下の通りです。
実際にハウスクリーニングを依頼する人は、2~3万円程度のお金をかけ、水回りを中心に実施する人が多いです。
ハウスクリーニング業者は、「女性スタッフがいる業者」を選ぶのがコツです。
内覧でチェックが厳しいのは女性である奥様です。
奥様は、長い時間、キッチン回りで過ごすことも多く、自分が利用するキッチンのことを特に重視して見ています。
そのため、女性の清掃スタッフにより、女性が気にする部分をしっかりとクリーニングできる業者を選ぶのが良いでしょう。
尚、内覧期間は2~3ヶ月に及びます。
せっかくハウスクリーニングを実施したとしても、すぐに汚れてしまうようだと意味がありません。
ハウスクリーニングが終わったら、売却が終わるまで綺麗に使ってハウスクリーニングの効果を長引かせることを意識するようにしてください。
3-3.付帯設備表・告知書を完成させる
3つ目として、内覧の前には付帯設備表と告知書は記載を完了するようにして下さい。
付帯設備表
告知書
付帯設備表とは、売却対象となるマンションや戸建ての設備に関する状況について、買主に明確にして引渡すための書類です。
告知書(物件状況確認書)とは、売主が知っている瑕疵を買主に伝えるための書面になります。
特に、付帯設備表は、必ず内覧の前に書くことをおススメします。
付帯設備表には、「有」、「無」、「撤去」の選択肢があり、「有」とした設備が引渡の対象となり、「撤去」としてものは引渡の対象とはなりません。
例えば、エアコンを撤去して売却したい場合には、付帯設備表で「撤去」を選択します。
内覧時に、購入希望者に「エアコンは付けたままですか?」等々の質問を受けることがあります。
この際、残すか撤去するか、しっかりと回答してあげることが重要です。
付帯設備表を記載することで、何を残して何を売るのかが明確になります。
付帯設備表さえ作っておけば、内覧時はほとんどの質問に答えることができます。
頭の整理にもなりますので、内覧前にしっかりと付帯設備表の記載を完了させておきましょう。
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3-4.内覧担当者を決めておく
内覧活動開始前に内覧のメイン担当者を決めておきます。
メイン担当者は奥様が対応することをおススメします。
奥様は地域のスーパーや病院、学習塾等の地域の情報を詳しく知っていますし、家の中の設備の細かい作動状況も熟知しています。
奥様の方が、購入希望者のご婦人に対してもソフトに接することができるため、ご主人よりは奥様の方がメイン担当にはふさわしいです。
メイン担当を決めたら、基本的には奥様が一人で担当し、ご主人は内覧当日には子供と一緒に外で待機する係になるのが良いフォーメーションになります。
ただし、あくまでもメインは奥様であって、ご主人も内覧対応できるようにしておくことが望ましいです。
万が一、奥様の予定が合わず内覧対応ができなくなった場合でも、ご主人も対応できるようにしておけば、良い買主を逃さずに済むかもしれません。
そのため、一応メインは奥様が担当するものの、最初の1~2回はご主人にも同席してもらい、どちらも対応できる体制づくりを構築しておきましょう。
3-5.周辺環境の話題を用意しておく
内覧に向けて周辺環境の良い話題も用意しておくことがポイントです。
全国宅地建物取引業協会連合会では、2017年11月に「不動産の日アンケート 住宅の居住志向及び購買等に関する意識調査」というものを実施しています。
アンケートの中では、住宅を購入する際のポイントについて調査しており、その結果は以下のとおりです。
「周辺・生活環境」に関しては、住宅を購入する際の理由で不動の1位の理由です。
不動産の購入は、「環境を買う」とも表現されます。
購入者は「3,000万円のマンションを買いたい」と思っているのではなく、「周辺環境が気に入ったから買いたい」と思っているのです。
この周辺環境の情報提供は、実際に住んでいた売主だからこそ知っている良い情報があります。
周辺環境の良い情報を提供することが、購入希望者の背中を押すきっかけにもなります。
例えば、「AスーパーよりもBスーパーの方が良い」とか、「内科ならC医院、耳鼻科ならD医院が良い」等々の地元民ならではの有益な情報です。
少し考えれば、街の中で自分が気に入っている部分が1つや2つはあると思います。
周辺環境の情報は、特に暮らしの中で役立つ日常的な情報が喜ばれます。
物件ではなく、環境を売り込むつもりで、地域の良い話題も用意しておきましょう。
4.内覧当時の準備
内覧当日には、以下の5つの準備をしておきます。
1.スリッパを用意する 2.全ての部屋を見ることができるようにする 3.部屋の空気を全て入れ替える 4.全ての部屋の電気を付けておく 5.子供と夫は外で待機させておく |
4-1.スリッパを用意する
当日は人数分のスリッパを必ず用意します。
購入希望者が普段家の中でスリッパを履いている人だと、スリッパがないと非常に足が底冷えしてしまいます。
足が冷えるだけで集中力もなくなるため、物件に対する印象も悪くなってしまいます。
些細なことですが、スリッパはとても重要です。
内覧の予定が入ったら、不動産会社には必ず何人来るか確認するようにしてください。
家に余分のスリッパがない人は、100円ショップが売っているような安いスリッパでも構わないので、事前にスリッパを購入しておきましょう。
4-2.全ての部屋を見ることができるようにする
内覧では全ての部屋は見せることができるようにしておきます。
「いや、この部屋はちょっと見せられません」という対応は、無いようにしてください。
たまに準備不足で、余計なモノをある部屋に押し込んでしまうような人を見かけます。
そうするとガラクタ部屋があるような印象を与えてしまうため、良くありません。
事前準備でモノを捨てきれないと、全ての部屋を見せることに苦慮してしまいます。
ガラクタ部屋を発生させる対応はNGですので、内覧までに極力モノを捨てるようにしましょう。
4-3.部屋の空気を全て入れ替える
購入希望者が内覧に来る1時間ほど前から、部屋の空気は入れ替えるようにしてください。
家のニオイは住んでいる人には分からないのですが、他人からすると独特のニオイがして気になることがあります。
せっかく見た目は綺麗にしているのに、ニオイで印象を落としてしまうのは残念です。
ニオイの印象は玄関に入った瞬間が一番大きいので、玄関には数日前から消臭剤を置いておくのも一つの対応です。
部屋はさわやかな状態にして客人を迎え入れるようにしましょう。
4-4.全ての部屋の電気を付けておく
全ての部屋の電気を付けておくようにします。
内覧では部屋は全て見せますので、内覧中は全部電気を付けておくと、暗い印象を与えずに済みます。
バスや洗面所、トイレ等の電気も付けておきます。
ただし、人感センサー付のライトであれば、人感センサーをONのままにしておいた方が良いです。
人感センサーは購入者にハイスペックな設備の印象を与えますので、人が近づいてパッと点くことを見せた方が良い対応といえます。
電気もLED対応していれば、LEDであることを是非アピールしてください。
部屋はすべて電気を付けて、明るい印象を与えるようにしましょう。
4-5.子供やペットは夫が外で待機させておく
小さな子供がいる場合には、内覧中は夫と外で待機させておくようにします。
購入希望者の中には、子供がいると集中できない人もいます。
また、子供は不用意な発言をする可能性もあるため、席を外させた方が無難です。
また、家の中で犬や猫を飼っている場合には、ペットも外で待機させるようにしてください。
犬や猫が嫌いな人は必ずいますので、ペットは外で待機させるようにします。
小さな子供やペットがいる家庭の場合には、当日の布陣も考えておきましょう。
5土日は空けておく
内覧活動が始まったら、売却が決まるまで、当面土日は空けておくようにします。
マンションや戸建の売却では、内覧は土日に集中することが多いです。
内覧の予定は金曜の夜に連絡が入り、急遽、次に日の土曜日に決まるようなこともあります。
購入希望者と内覧の予定が合わせにくくなると、売却活動が長引きストレスが溜まります。
売却活動を早く終わらせるためにも、しばらく土日は内覧に専念することをおススメします。
尚、子供の運動会などあらかじめ内覧が無理な日が分かっている場合には、不動産会社の営業マンに早めに伝えておくようにしましょう。
6.ホームステージングは不要
ホームステージングとは、プロのコーディネートによって中古住宅をモデルルームのように演出して売却する手法です。
ステージには演出するという意味があります。
おしゃれな家具や調度品をレンタルし、新築マンションのモデルルームのような雰囲気に仕立て内覧を行います。
ホームステージングはアメリカの中古住宅販売で普及しており、ここ数年、日本でも利用する人が増えてきました。
家を綺麗に見せることができるため、一定の効果があることは期待できますが、必要か不要かと聞かれると、「ホームステージングまではやる必要はない」というのが結論です。
ホームステージングは、原則として内覧を「引越後に行うパターン」の人を対象としています。
がらんどうの状態で、家具をレンタルします。
レンタル料は安いプランでも17万円程度、デラックスプランだと30万円程度です。
レンタルの期間は3ヶ月程度になります。
一方で、内覧を「住みながら行うパターン」にも対応しているホームステージングもあります。
住ながらホームステージングを行うと、費用は4時間で5万円程度となります。
相当に割高となってしまうため、住みながらのホームステージングは非現実的です。
売却でここまで費用をかけるのなら、インスペクション(建物状況調査)をやった方が効果はあります。
インスペクションとはプロによる建物の目視検査です。
インスペクションの費用は5万円程度となります。
インスペクションに合格すれば、建物の一定の信頼性が得られますので、買主に安心感を与えることができます。
見た目だけを改善するホームステージングに17万円かけるよりも、安全・安心をアピールできるインスペクションに5万円かけた方が価値はあります。
もしホームステージングをやるくらいであれば、インスペクションにお金をかけた方が良いでしょう。
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7.内覧に当たっての心構え
最後に内覧に当たっての心構えについて触れておきます。
内覧は、一生懸命対応しても決まらないときは決まりません。
あまり気合を入れ過ぎて対応してしまうと、断られたときに落ち込みも激しくなり精神的に疲れてしまいます。
慣れないことなので、3~4回続けて決まらないと、精神的に凹みます。
内覧では、見て気に入る人もいますが、見て購入をやめることを決断する人もいます。
例えば、自分が持っている大きな家具が置けないと分かれば、物件自体に問題がなくても購入を見送る人はいます。
内覧することで、自分たちの要望に合わないと思えば、物件や売主の対応が悪くなくても売却は決まりません。
売買とはマッチングですので、希望がずれていれば全く決まらず、希望があっていればあっさりと決まります。
そのため、内覧はしっかりと準備はするものの、気楽に対応するという心構えが重要なのです。
内覧は、準備さえしっかりと行い普通の対応をしておけば十分です。
もし、それでも売れないということであれば、原因は他にあると考えてください。
内覧はあまり気負わず、粛々と対応するようにしましょう。
8.まとめ
以上、マンション・戸建てを高く売るための内覧会の準備と当日対応の仕方を解説してきました。
内覧は、当日までの事前準備が重要です。
前日に慌ててバタバタしないように、モノを捨てて部屋を綺麗にしておくことがポイントです。
気負う必要はありませんが、準備だけはしっかりしておくことをおススメします。