瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いとは?民法改正は2020年4月1日から!

2019/02/28

瑕疵担保責任の民法改正施工日は2020年4月1日です。
改正後、瑕疵担保責任は契約不適合責任へと変わります。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いは下表の通りです。新しい民法では瑕疵担保責任という概念自体が廃止されます。
従来の瑕疵担保責任に馴染みのある人にとっては、新しい契約不適合責任に違和感を覚える人もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、「瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い」について解説いたします。
さらに、改正後は売主にどのようなことが求められていくのかについても紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。

この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役)
保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン

 

1.瑕疵担保責任とは

この記事では、便宜上、2020年3月31日以前の民法を旧民法、2020年4月1日以降の民法を新民法と表現します。
最初に旧民法の瑕疵担保責任についておさらいします。

1-1.瑕疵とは

瑕疵(かし)とは、その物の品質や性能に欠陥の有ることを指します。
瑕疵は、用語の定義もあいまいで、分かりにくく、実務上は判例で補って解釈してきた歴史があります。

瑕疵には、「物理的瑕疵」と「法律的瑕疵」、「心理的瑕疵」、「環境的瑕疵」の4つがあります。

 

特に、心理的瑕疵や環境的瑕疵は非常に主観的です。
どこからどこまでが瑕疵なのか、不明瞭であり、売主や不動産会社を悩ます原因にもなっていました。

1-2.旧民法の瑕疵担保責任規定

旧民法では、瑕疵担保責任は第570条、第566条に規定されています。

【旧民法の規定】


(第570条)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

(第566条)
1.売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2.前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3.前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。


瑕疵担保責任は、第570条と第566条の2つに渡って規定されているため、少し分かりにくいです。

まず、瑕疵担保責任の対象となるのは第570条で「隠れた瑕疵」とされています。
隠れた瑕疵とは、買主が通常の注意を払ったのにもかかわらず発見できなかった瑕疵です。

隠れた瑕疵が発見されたときは、第566条が準用されることになっています。
第566条では、買主は「発見後1年間」は売主に対し損害賠償を、契約の目的が達成されない場合は解除を請求できると定めています。

旧民法で買主が請求できる権利は、「損害賠償」と「契約解除」の2つです。
瑕疵補修請求権は認められていません。

瑕疵担保責任で買主が請求できる損害賠償の範囲は、「信頼利益」に限られます。

信頼利益とは、契約が不成立・無効になった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害です。
具体的には、登記費用などの契約締結のための準備費用が該当します。

一方で、類似の言葉に「履行利益」というものも存在します。

履行利益とは、契約が履行されたならば債権者が得られたであろう利益を失った損害です。
具体的には、転売利益や営業利益などが該当します。

瑕疵担保責任による損害賠償の範囲には、履行利益は含まれません。

また、契約解除に関しては、「契約の目的が達成できないとき」に限られている点も特徴です。
瑕疵担保責任では、よほどのことがない限り、契約解除まではいかないということになります。

瑕疵担保責任は、売買契約の有償性を考慮し、売買代金の不均衡を是正し買主を保護するために法が特別に規定した売主の法定責任であると考えられています。
このような考えを「法定責任説」と呼んでいます。

1-3.瑕疵担保責任の免責

旧民法の規定では、買主が瑕疵担保責任を追及できるのが「発見後1年間」となっているため、そのまま当てはめると売主の負担が重くなり過ぎてしまいます。

そのため、実務上は「発見」ではなく「引渡」を起算点とし、「引渡後○ヶ月」と責任期間を限定するのが一般的です。

通常、個人が売主の場合には、瑕疵担責任の期間を「引渡後3ヶ月」と定めることが多いです。

3ヶ月と定めることにより、永久ではなくなるため、このように期間を限定することを瑕疵担保責任の一部免責と呼んでいます。

また、個人が売主の場合、買主が合意すれば、売主は瑕疵担保責任を一切負わないとすることも可能です。
瑕疵担保責任を一切負わない場合を、全部免責と呼びます。

個人が売主の場合には、瑕疵担保責任の一部免責や全部免責は有効です。

ただし、売主が宅地建物取引業者の場合、「引渡から2年以上」とする特約を除いて、民法の規定より買主に不利な特約をすることができないことになっています。

そのため、売主が宅地建物取引業者の場合は瑕疵担保責任期間が2年となっていることが通常です。

尚、個人が売主の場合、瑕疵担保責任を免責したとしても、売主が瑕疵の存在を知っていながら買主に告知しなかった場合には、売主は当該瑕疵につき担保責任を免れることができません。

従って、旧民法では、売主は自分の知っている瑕疵は全て買主へ伝える必要があります。

2.契約不適合責任とは

新民法では瑕疵担保責任問う概念そのものが廃止されます。
その代り、買主保護のために「契約不適合責任」という新たな責任が売主に課されることになります。

契約不適合とは、目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであることを指します。

新民法では、売主は契約内容に合う欠陥のない目的物を給付する義務があるという考えに立ち、契約不適合責任を債務不履行責任の一つと位置付けました。
このような考え方を法定責任説に対し、「契約責任説」と呼んでいます。

簡単に言うと、「契約の内容とは何か」、「目的物が契約内容に適合しているかどうか」が問われるということです。

例えば雨漏りが発生している場合には、雨漏りがしていることをはっきりと契約書に明記し、買主が同意していれば、それが契約内容となり、責任は問われないということになります。

尚、契約不適合責任では、隠れた瑕疵かどうかは関係ありません。
あくまでも契約書に書かれている内容と合致しているのか、していないのかが問題となり、買主が発見できなかったかどうかは問題にはならないということです。

3.買主か請求できる4つの権利

契約不適合責任では、買主は「損害賠償請求」と「契約の解除」に加え、新たに「追完請求」と「代金減額請求」ができるようになりました。

3-1.買主の追完請求

契約不適合責任では、目的物が契約内容に合致していないときは、買主は売主に対して「追完請求」をすることができます。
追完請求とは、簡単に言うと「直してください」という請求です。

瑕疵担保責任では、売主に修補請求をできなかったため、修補請求できるようになったというのが契約不適合責任との最大の違いになります。

追完請求は、新民法の第562条に規定されています。

(買主の追完請求権)


新民法第562条
1.引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる

2.前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。


条文で規定されている追完請求は、「目的物の修補」、「代替物の引渡し」、「不足分の引渡し」の3つです。

しかしながら、不動産は工場で部品を作って売っているような商品ではないため、実質的には「目的物の修補」が対象となります。

「代替物の引渡し」や「不足分の引渡し」は工場生産品を売買するような取引を前提としています。

ただ、「売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる」となっています。

「買主に不相当な負担を課するものではないこと」を前提に、売主は追完方法について3つのうちどれか1つを選択できるというのも特徴です。

また、買主に帰責性のあるものについては追完請求をすることができません。
一方で、売主については帰責性がなくても追完義務は免れず、売主は無過失責任となります。

3-2.買主の代金減額請求

契約不適合責任では、買主が修補請求をしても売主が修補しないとき、あるいは修補が不能であるとき等については、「代金減額請求」ができるようになりました。

目的物に問題があるのなら、その見合わない部分は代金を減らして欲しいという当然の主張ができるようになります。
瑕疵担保責任では、代金請求ができなかったため、これも大きな違いです。

(買主の代金減額請求権)


新民法第563条
1.前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2.前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3.第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。


代金減額請求は、まず先に追完請求を行って、催促をしても無理なら代金性減額請求という流れになります。
契約不適合責任では、追完請求が主たる請求であるということがポイントです。

ただし、上記の第563条2項に記載された4つのケースにおいては、催告することなくいきなり代金減額請求ができます。

代金減額請求に関しても、売主の無過失責任となります。

尚、代金減額請求については、代金減額請求をすると買主は契約の効力を認めていることになるため、契約解除と代金減額請求は両立しえないと考えられています。

安易に代金減額請求を選択すると、買主は契約解除ができなくなってしまうことから、個人間売買においては代金減額請求権の条項は省かれた形の売買契約書が主流となる見込みです。

3-3.買主の損害賠償請求

契約不適合責任では、「損害賠償請求」もできます。
損害賠償請求については、瑕疵担保責任でもできましたが、少し内容が異なります。

まず、契約不適合責任は債務不履行責任であるため、損害賠償については売主の過失責任となります。

瑕疵担保責任では、売主の無過失責任でしたが、契約不適合責任では売主に免責事由があれば損害賠償請求ができません。

一方で、瑕疵担保責任の損害賠償請求の範囲は「信頼利益」に限られていました。
しかしながら、契約不適合責任では「履行利益」も損害賠償請求に含まれます

新民法では、「債務不履行による損害賠償」の規定も見直されました。
契約不適合の損害賠償請求は、第564条と415条がセットで改定されています。

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)


新民法第564条
前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。


(債務不履行による損害賠償)


新民法第415条
1.債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない


3-4.契約の解除

契約不適合責任では、「契約解除」もできます。
契約解除についても、瑕疵担保責任でもできましたが、少し内容が異なります。

契約不適合責任の契約解除も債務不履行の規律に従うことになります。

(契約の解除)


(催告による解除権)
新民法第541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(催告によらない解除)
新民法第542条
1.次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
(以下省略)


瑕疵担保責任の解除は、「買主が契約した目的を達することができない」ときに限られていましたが、契約不適合責任ではそのような限定はありません。
ただし、「社会通念に照らして軽微であるとき」は解除できないとされています。

また、契約解除については、売主の故意・過失を要件としていません。

4.契約不適合責任も任意規定

瑕疵担保責任も契約不適合責任も、共通点は任意規定であるという点です。

瑕疵担保責任では、個人が売主の場合、買主が同意すれば一部免責や全部免責を行っていました。
これは瑕疵担保責任の規定が「任意規定」であるためです。

任意規定とは、当事者の合意があれば、規定の内容を変更して契約しても有効となる規定のことを指します。

それに対して、「強行法規」とは、当事者間の合意の如何を問わず適用される規定のことをいいます。
強行法規に反する契約内容は無効です。

例えば、宅地建物取引業者が売主の場合、瑕疵担保責任期間を引渡から2年未満とすると無効となりますが、このような規定が強行法規になります。

個人間の売買の場合、瑕疵担保責任を全部免責しても有効でした。
これは瑕疵担保責任の規定が任意規定であるためです。

新民法も契約不適合責任は任意規定となります。
そのため、個人間売買においては、契約不適合責任を一部または全部免責とすることができます。

例えば、表現は考慮する必要はありますが「契約不適合責任を負う期間を3ヶ月とする」とか、「契約不適合責任は全部免責する」という旨の内容の契約も買主が同意していれば有効です。

ただし、従来の瑕疵担保責任は、買主の請求できる権利が「信頼利益に限られる損害賠償」や「目的を達することができないときの契約解除」でした。

3ヶ月間の瑕疵担保責任期間があったとしても、信頼利益に限られる損害賠償なら、言ってもしょうがないと諦めていた人も多かったと思います。
また、契約解除も言い出しにくい権利でした。

一方で、契約不適合責任で認められた追完請求は、かなり言いやすい請求内容となります。
購入した後、1~2ヶ月の間に不具合が見つかれば、「直してください」と言ってくる可能性は高くなると思われます。

契約不適合責任も3ヶ月という一部免責はできますが、瑕疵担保責任の3ヶ月と比べると、売主の精神的な負担は重くなるでしょう。

5.改正後に必要な対応

この章では改正後に必要な対応について解説します。

5-1.売買契約書にしっかり現状を書き込む

改正後は、物件の状況を「売買契約書にしっかり書き込む」ということに尽きます。
契約の内容は何かということを明確にしておくことが一番大事な対応です。

改正前でも、売買契約書の中には容認事項の欄が存在します。
容認事項とは、「物件のここが壊れているけど、了解してください」という内容です。
改正後は、売買契約書の容認事項の欄に、びっしりと書き込むことになります。

また、改正前では重要事項説明書に記載があっても、売買契約書には記載がないような書面も多く見られます。

しかしながら、今後は売買契約書が非常に重要になってくるため、売買契約書と重要事項説明書に同じことを書くことも求められます。

契約不適合責任は、目的物が契約内容に合致しているかどうかが問われます。

雨漏りしていても、売買契約書に「雨漏りしています」と書けば責任を問われませんし、売買契約書に雨漏りの記載がなければ追完請求等を受けることになります。

「隠れているとか、隠れていない」ではなく、「書かれているか、書かれていないか」が問われるようになるのです。

5-2.告知書・付帯設備表への記載の徹底する

新民法では告知書と付帯設備表への記載の徹底がますます重要になってきます。

契約不適合責任では、目的物が契約内容に合致しているかが問われます。
そのため、売買契約書に記載する前に、そもそも目的物がどのような状態であるかをしっかりと把握する必要があります。

改正前においても、物件の状態を明らかにするために、告知書と付帯設備表の記載を行っています。

告知書(物件状況確認書)とは、売主が知っている瑕疵を買主に伝えるための書面です。
それに対して、付帯設備表とは、売却対象となるマンションや戸建ての設備に関する状況について、買主に明確にして引渡すための書類になります。

告知書

付帯設備表

瑕疵担保責任における告知書は、売主にとって知っている瑕疵を告げる役割を果たします。
契約不適合責任では、告知書は目的物の状態を示すものへと性格が変わっていきます。

告知書と付帯設備表によって、物件の状況を洗い出し、それを売買契約書にしっかりと書き込んでいく対応が必要です。

告知書や付帯設備表の記載内容が不足していると、それが契約書に反映され、そのまま売却すれば契約不適合の状態となってしまします。

告知書や付帯設備表の完成度の高さが、売買契約書の完成度を決めると言っても過言ではありません。
売買契約書の完成度が低ければ、契約不適合責任に問われる可能性が高くなります。

改正後は告知書や付帯設備表の記載が、今まで以上に重要となってきます。
売主は時間をかけてでも、しっかりと告知書と付帯設備表の記載を行いましょう。

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5-3.インスペクションの実施や瑕疵担保保険を付保する

新民法では、インスペクションの実施や瑕疵担保保険を付保も重要性を増していきます。

契約不適合責任では、最初に追完請求が来るのが基本です。
代金減額請求は、あくまでも追完請求が駄目だったときに発動される請求権です。

そのため、契約不適合責任では、「直してください」という追完請求の1つである「修補請求」がかなりの部分を占めることが予想されます。

売主からすると、修補請求はキリがないため、非常に厄介な請求権です。
そこで重要となってくるのが既存住宅売買瑕疵保険(以下、「瑕疵担保保険」の略)の付保になります。

瑕疵担保保険とは、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分等について瑕疵が発見されたときは、その修補費用が支払われる保険のことをいいます。

瑕疵担保保険に加入していれば、修補請求が来ても保険でカバーすることができます。
売主としては、安心して物件を売ることができます。

契約不適合責任に対処するためには、売主としては瑕疵担保保険を付保してから売却するのが望ましい対応です。

ただ、瑕疵担保保険の付保までは面倒という話であれば、せめてインスペクション(建物状況調査)を実施することをおススメします。

インスペクションとは、建物専門家による目視や計測等による建物状況調査のことです。
インスペクションに合格しておくと、建物に大きな欠陥がないことが分かるため、安心して売却することができます。

また、インスペクションに合格することは、瑕疵担保保険の1つの付保要件にもなっています。

瑕疵担保保険に加入するには、「新耐震基準を満たしている建物」で、かつ、「インスペクションに合格していること」の2つの要件が必要です。

新耐震基準とは、昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認申請を通した建物を指します。

新耐震基準の建物で、かつ、インスペクションに合格していれば、買主側で瑕疵担保保険に加入することもできます。

瑕疵担保保険の付保は、住宅ローン控除の適用要件の一つでもあるため、木造なら築20年超、鉄筋コンクリートなら築25年超の物件の場合、買主自ら瑕疵担保保険を付保するという動機があります。

よって、インスペクションに合格しておくだけでも、かなり修補請求のリスクを減らすことはできるのです。

さらに、インスペクションは売買契約の前に購入希望者から実施したいと希望を受けることがあります。
アメリカでは買主から希望されることがほとんどです。

もし、購入希望者からインスペクションの希望があれば、ぜひ、応諾することをおススメします。

売主としてはインスペクション費用も削減できますし、購入希望者にも物件を良く知ってもらった上で買ってもらうことができます。

インスペクションや瑕疵担保保険は、ますます重要になってきますので、制度をよく理解した上で、上手に活用するようにしてください。

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6.まとめ

以上、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いについて解説してきました。

瑕疵担保責任は法律に基づく特別の責任で、契約不適合責任は契約に基づく債務不履行責任となります。

瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」を要件としていましたが、契約不適合責任では「隠れた瑕疵」は問われません。

買主の請求できる権利は、瑕疵担保責任では「損害賠償と契約解除」の2つでしたが、契約不適合責任では「追完請求、代金減額請求、損害賠償、契約解除」の4つになります。

このうち、損害賠償請求については、瑕疵担保責任では売主の無過失責任、契約不適合責任では売主の過失責任と変わります。
また損害賠償の範囲は、瑕疵担保責任では信頼利益のみでしたが、契約不適合責任では履行利益も含まれるようになります。

契約内容と目的物を一致させ、契約に適合した物件を売買するようにしましょう。

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