一般媒介・専任媒介・レインズとは?不動産売却でおすすめの媒介契約を紹介

2018/10/04

不動産を売却する場合、不動産会社に仲介を依頼します。

仲介の契約には、3種類あり、どれを選択するかによっても売却の結果も異なる可能性が出てきます。

 

初めて不動産を売却する人は、「媒介(バイカイ)」という言葉すら聞いたこともない人が多いと思います。

 

そこでこの記事では、媒介契約とは何か、また不動産を売却するためのおススメの媒介契約はどれなのかについて解説致します。

この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役)
保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン

 

1.媒介契約とは

不動産会社に仲介を依頼するときの契約を媒介契約と呼びます。

 

媒介とは、仲介またはあっせんのことを指します。

売主からの媒介依頼は買主を見つけること、買主からの媒介依頼は売主を見つけることになります。

 

1-1.一般媒介と専任媒介の違い比較表

媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。

最初に3つの契約形態の比較表を示します。

表中の中で、「自己発見取引」という言葉があります。

自己発見取引とは、売主が自分で買主を探してくることです。

 

例えば、自分で親戚や友人、隣地所有者に打診したところ、「買いたい」という返事があり売買が成立するような場合を指します。

 

1-2.一般媒介とは

一般媒介契約とは、複数の不動産会社に重ねて媒介を依頼することができる媒介契約のことを指します。

 

例えば、A社、B社、C社という不動産会社があった場合、その3社に売却の依頼をできるのが一般媒介契約の特徴です。

 

不動産の売却は情報戦であるため、同時に何社も使った方が、当然、有利となります。

仮にA社が買主を見つけられなかったとしても、B社が見つけてくれる可能性があります。

さらにB社よりもC社の方が高い金額の買主を見つけてくれることも考えられます。

 

「重ねて依頼できる」ということは、「同時に何社にも依頼できる」ということを意味しています。

 

一般媒介は、他社に重ねて依頼できるくらいなので、当然、自己発見取引も認められています。

 

一般媒介の有効期間は、標準約款では3ヶ月と定められていますが、法律上の規制は特にありません。

 

また一般媒介はレインズの登録義務もありません。

レインズについては「第3章 レインズとは」で解説します。

 

1-3.一般媒介の明示型と非明示型

一般媒介では、依頼した他の業者名を明らかにする「明示型」と業者名を明らかにしない「非明示型」があることに注意が必要です。

売主としては、「非明示型」を選択することを強くおススメします。

 

明示型の場合、A社、B社、C社に依頼した場合、例えばA社には「B社とC社にも依頼しています」と明示する必要があります。

 

一方で、非明示型であれば、A社、B社、C社に依頼していたとしても、それぞれの会社には何も言う必要がありません。

途中からD社を加えたとしても、問題がないということになります。

 

明示型を選択してしまうと、以下の2つの問題が発生します。

 

明示型を選択したときの問題点


1.自己発見取引をした場合、全ての業者に通知しなければならない。

2.明示していない業者によって成約した場合、履行のために要した費用が請求される場合がある。


 

明示型でA社、B社、C社に依頼していた場合、黙って依頼したD社が買主を決めてしまうと、A社、B社、C社の3社から今までの費用を請求されてしまうことになります。

 

これではせっかくの一般媒介も自由度が半減します。

 

非明示型とするには、媒介契約書の中で「依頼者が他の業者に重ねて依頼する場合でも、その業者名を明示する義務を負わない」という特約の一文を加えておく必要があります。

 

一般媒介契約の標準約款は明示型となっているため、一般媒介を契約する際は、必ず非明示型特約を追記するようにしましょう。

 

1-4.専任媒介および専属専任媒介とは

専任媒介および専属専任媒介は、媒介契約が1社のみしか締結できない契約になります。

 

専任媒介と専属専任媒介の主な違いは、専任媒介は自己発見取引が認められているのに対し、専属専任媒介は自己発見取引すら認められていないという点が大きな違いです。

専属専任媒介の方が、制約が厳しいということになります。

 

専任媒介と専属専任媒介(以下、まとめて「専任系媒介契約」と略)では、契約できる不動産会社が1社に絞られてしまうため、売主にとってリスクがあります。

 

仮に、専任系媒介契約を締結後、不動産会社が全く売却活動をしないというような事態もあり得るためです。

 

そのため、専任系媒介契約では、契約期間が「3ヶ月以内」と定められています。

しかも当然に更新されることはなく、4ヵ月目以降自動更新されるようなこともありません。

 

専任系媒介契約では、売主が依頼した後、不動産会社が売却活動をサボるリスクがあります。

そこで、専任系媒介契約では不動産会社に報告義務が課されています。

 

報告義務は、専任媒介で2週間に1回以上の報告、専属専任媒介で1週間に1回以上の報告となっています。

 

一般媒介の場合には、不動産会社が仲介手数料をもらうために頑張るはずなので、報告義務は不要という考えになっています。

 

また、専任系媒介契約では不動産会社のサボり防止のため、物件情報のレインズへの登録が義務付けられています。

レインズについては「第3章 レインズとは」で解説します。

 

では、なぜこのような専任系媒介契約が存在するのかというと、それは買主を保護するためでもあります。

 

一般媒介となると、不動産会社は頑張らないと仲介手数料を取ることができないため、無理矢理、不動産を売ろうとします。

すると、買主は騙されて高く物件を購入してしまう恐れがあります。

 

一方で、専任系媒介契約であれば、不動産会社は売主から仲介手数料を得られることが確約されています。

そのため、不動産会社はじっくりと売却活動をすることができます。

 

専任系媒介契約であれば、買主のことを十分に考え、焦らずに良い物件を提供することもできるのです。

 

売主にとっては少し腑に落ちない契約ですが、宅地建物取引業法は、そもそも消費者である買主を守るために存在する法律です。

 

消費者である買主を守るためには、売主が不利となる媒介契約があっても認めざるを得ません。

 

尚、自分が不動産を購入する場合には、専任系媒介契約の物件を探すことをおススメします。

専任系媒介契約の物件であれば、不動産会社が他の購入者をブロックしてくれれば、値引交渉もしやすいというのが理由です。

【関連記事】

専任媒介契約を解除したい!費用や違約金はかかるの?解除方法を解説

以上、ここまで媒介契約について見てきました。

媒介契約と仲介手数料には深い関係があります。

そこで次に仲介手数料の仕組みついて解説します。

 

2.仲介手数料の仕組み

不動産会社が受領できる仲介手数料は宅地建物取引業法により上限が定められています。※売買金額は、物件の本体価格をいい、消費税を含まない価格を指します。

※仲介手数料には、別途消費税がかかります。

 

例えば、売買金額が3,000万円の物件であれば、仲介手数料の上限は以下のようになります。


仲介手数料の上限 = 売買金額 × 3% + 6万円

         = 3,000万円 × 3% + 6万円

         = 96万円


 

仲介手数料は、あくまでも上限が定められているだけなので、値引は可能です。

ただし、不動産会社は仲介手数料を満額請求してくることが一般的であるため、仲介手数料の「相場イコール上限額」となっています。

 

仲介手数料に関しては、専任系媒介契約の方が、値引しやすい傾向になります。

専任系媒介契約は、不動産会社にとっても有利な契約であるため、専任系媒介契約を引き換えに、仲介手数料を値引交渉するという人もいます。

 

それに対して、一般媒介の場合は、仲介手数料の値引きはほとんど望めません。

その代り、複数の不動産会社が頑張って売却活動をしてくれるため、早く高く売れる可能性はあります。

 

また、仲介手数料は、成功報酬であることを最大の特徴としています。

報酬の発生要件は、契約が決まってはじめて発生します。

 

仮に一般媒介契約で複数の不動産会社に媒介を依頼したとしても、仲介手数料は契約を決めた1社のみに支払えば良いことになります。

つまり、一般媒介だろうが、専任系媒介だろうが、かかる費用は同じということです。

 

仲介手数料の支払いタイミングは、売買契約時に50%、引渡時に50%を支払うことが通常です。

 

売主としては引渡時に100%支払いたいところですが、実は不動産会社の請求権は、売買契約時に100%請求できることが認められています。

 

しかしながら、売買では売買契約から引渡までの間に、不動産会社に尽力してもらう業務が多くあり、全額支払いは留保しておくことが望ましいです。

 

そこで、妥協点として、売買契約時に50%、引渡時に50%支払うことが、商習慣となっています。

 

尚、上記上限ルールとは別に、400万円以下の物件の取引では、不動産会社が売主から仲介手数料に現地調査費等の費用相当額を加え、最大18万円まで受領することが可能となっています。


受領可能額 = 仲介手数料 + 現地調査費等の費用相当額 ≦ 18万円


400万円以下の低廉な不動産の売却に関しては、18万円まで請求されることもあるということも知っておきましょう。

 

関連記事

仲介手数料の計算式エクセル「3%+6万円」や「400万円以下」・消費税も解説

媒介契約の話の中でレインズという言葉が登場してきました。

そこで次にレインズについてご紹介いたします。

 

3.レインズとは

レインズ(REINS:Real Estate Information Network System)とは宅地建物取引業者専用のネットワークシステムです。

IDとパスワードは宅地建物取引業者しか割り振られないため、全国の不動産会社しか見ることのできない情報システムです。

レインズの画面

 

レインズは、不動産会社間が物件情報を共有しあうことで、迅速な取引を実現することを目的としたシステムです。

 

例えば、神奈川県の業者Aが都内の物件の売却を依頼されたとします。

業者Aは神奈川県には強いですが、都内の購入希望者の情報は多く持っていないことが考えられます。

 

ところが、業者Aがレインズに物件登録をすると、全国の業者に売物件の情報を公開することができます。

 

その情報を見かけた都内の業者Bが、「こんなお客さんがいますよ」と業者Aに連絡をします。

もし条件が合えば、売買が成立します。

 

この場合、業者Aは売主から仲介手数料を受領し、業者Bは買主から仲介手数料を受領することになります。

 

レインズを使えば、仮に業者Aが都内に不案内だとしても、業者Bが買主を見つけてくれることができるため、売買をさせることができるのです。

レインズに物件登録をすれば、なんとなく売買が促進しやすくなることが分かります。

 

専任系媒介契約では、不動産会社が売却活動をサボるリスクがありました。

そこで、専任系媒介契約では、レインズには情報登録することを義務付けることで、売却のしやすさを促す仕組みになっています。

 

レインズ登録は、他の不動産会社に物件情報を公開し、迅速な取引を促すことを目的としています。

 

一方で、一般媒介ではレインズへの登録義務はありません。

 

一般媒介では、不動産会社が本気で売りたければ、もちろんレインズへも登録するだろうという考えに立っているからです。

 

一般媒介は、義務付けがなくても不動産会社が頑張るであろうという前提から、報告義務もレインズへの登録義務もないのです。

 

以上、ここまでレインズについて見てきました。

専任系媒介契約には、報告義務やレインズ登録義務があるため、一見すると良さそうな契約にも思えます。

 

しかしながら、専任系媒介契約には、両手仲介のリスクがあります。

そこで次に専任媒介と両手仲介のリスクについて解説します。

4.専任媒介と両手仲介のリスク

不動産会社は、1社で売主と買主を結びつけることも認められています。

1社で売主と買主を結び付けた場合、売主からも、買主からも仲介手数料を受領することができます。

 

売主からも買い主からも仲介手数料を受領することを「両手仲介」と呼んでいます。

両手仲介であれば、仲介手数料は400万円超の取引だと「6%+12万円」ということになります。

 

日本では両手仲介が普通に行われているため、違和感を覚えない人も多いと思います。

しかしながら、両手仲介というのは、矛盾を含む取引です。

 

売主は高く売りたい、買主は安く買いたいと、それぞれ相反する思いがあります。

すると、売主と買主の間に1社の不動産会社が入ったら、結局、どちらの味方につくのかという問題が発生します。

 

不動産会社は利益相反する双方の代理的な立場に立つことになり、理論的に矛盾した立ち位置となります。

 

そのため、海外の不動産取引では、このような双方代理を禁止していることが多いです。

アメリカなどでは、売主の仲介会社は売主側にしかつかず、高く売ることのみに専念できるようになっています。

 

日本の場合、両手仲介は合法的に認められています。

ここで問題となってくるのが、専任系媒介契約です。

 

専任系媒介契約をすると、売主との関係は3ヶ月間固定されます。

不動産会社にとって見ると、専任系媒介契約は両手仲介を狙えるチャンスです。

 

例えば、4,000万円で売りに出していた物件も、3,800万円なら買うという顧客が現れた場合、なんとか成立させたいという動機が働きます。

 

すると、不動産会社が売主に対して急に「3,800万円まで値下げしませんか?」と値下げを要求してくることもあります。

 

売主からすると、飼い犬に手を噛まれた感じになりますが、両手仲介があることにより、不動産会社が手のひら返したように買主の味方をし始める場合もあり得るのです。

 

また、たとえレインズに物件登録していたとしても、売主の業者は他の業者からの打診を断ることもできます。

 

レインズを見て、別の業者が「こんな買主がいるのですが、どうですか?」と打診があっても、両手仲介が決まりそうな場面なら「他に買主が現れたので、お断りします」という流れになってしまいます。

 

両手仲介が全て悪いとは言いませんが、両手仲介では往々にして売主が値引によって犠牲となることが多いです。

 

専任系媒介契約では、不動産会社との関係が3ヶ月間固定されてしまうため、早く売りたいとなれば、値引に応じざるを得ません。

 

一方で、専任系媒介契約は、買主にとっては買いやすい物件です。

4,000万円の物件でも、じっくり時間をかけて3,800万円に交渉することができます。

 

一般媒介の物件だと、交渉中に他の不動産会社が4,000万円で購入する買主を連れてきてしまうかもしれません。

 

買主は何千万円もする不動産を購入するわけですから、慎重に判断する時間が必要です。

4,000万円で購入する買主が現れてしまえば、焦って買付価格を4,000万円以上に上げないと買えないことになってしまいます。

 

両手仲介や専任系媒介契約は、買主にとっては都合の良いシステムです。

宅地建物取引業法は、買主を守るための法律ですので、両手仲介が絶対的な悪とは言い切れなのです。

 

5.売却でおすすめなのは一般媒介

ここまでお読みいただければわかると思いますが、売主におすすめの契約は、一般媒介契約になります。

 

もちろん、一般媒介にも以下のようなデメリットもあります。


1.仲介手数料を値引しにくい

2.売却の成立や変更等があった場合、同じことを何社にも伝えなければならない

3.途中報告がない


 

しかしながら、不動産の売却は情報戦であることを考慮すると、複数の不動産会社に依頼した方が、確率的に高く売れる可能性が出ることは間違いありません。

 

また、一般媒介では、不動産会社を選ばなくても良いというメリットもあります。

良く「不動産会社の選び方」みたいなノウハウがありますが、一度や二度会ったくらいでは、本当に実力のある営業マンを選ぶことはできません。

 

たとえ良い営業マンを選べたとしても、たまたま他社の方が良い買主を見つけて来る可能性もあります。

選んでしまうと、可能性を狭めてしまうことにもなります。

 

そのため、不動産会社はあえて「選ばない」ということをおススメします。

せっかく選ばなくても良い一般媒介契約という形式があるわけですから、不動産会社選びには悩む必要はないのです。

 

もし、不動産会社選びに迷うようであれば、一般媒介を選択するようにしましょう。

尚、一般媒介を選択する際は、「非明示型」とすることを忘れないようにして下さい。

【関連記事】

一般媒介とは?期間や手数料・メリットとデメリットについて解説

6.まとめ

以上、一般媒介・専任媒介・レインズとは?不動産売却でおすすめの媒介契約を紹介してきました。

 

媒介契約には3種類があります。

売却のときは一般媒介を選択し、購入のときは専任媒介または専属専任媒介の物件を狙うのが基本となります。

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