「不動産一括査定 デメリット」のようなキーワードで検索している人は多いようです。
なんとなく「不動産一括査定サイトって大丈夫なの?デメリットはないの?」と思っている人は多いのではないでしょうか。
もちろん、不動産一括査定には当然にデメリットがあります。
不動産一括査定には、構造上、発生してしまう厄介なデメリットがあることを知っておくべきです。
そこで、この記事では、「不動産一括査定サイトの本当のデメリット」について解説します。
この記事を読むことで、あなたは不動産一括査定サイトに潜むデメリットを理解し、不動産一括査定サイトの使い方について理解することができます。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役) 保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン |
目次
1.不動産一括査定サイトとは
不動産一括査定サイトとは、マンションや戸建ての売主が、複数の不動産会社に無料で同時に査定依頼できるサイトです。
主な不動産一括査定サイトは、最大6社の不動産会社に対して査定を依頼することができます。
不動産一括査定サイトは、一括査定サイト自身が査定を行うのではなく、一括査定サイトに登録している不動産会社が訪問査定を行うサービスです。
訪問査定とは、実際に売却する物件を現地まで見にきて査定することを指します。
一括査定サイトを利用するかどうかは別として、不動産の売却の前は不動産会社による訪問査定を行うことが通常です。
中古のマンションや戸建ては、最初から値段が付いているわけではないため、いくらで売りに出せば良いのか分かりません。
売出価格は安過ぎれば損をしますし、高過ぎれば売れなくなります。
そこで、適正な売出価格を決定するために査定を行うのが、売却の第一歩です。
査定価格は、あくまでも「これくらいの金額で売れるだろう」という予想価格になります。
予想価格であるため、売却を保証しているものではないという点がポイントです。
査定価格は売却の予想価格であるため、本当にその予想が適正なのかが一般の人には分からないという問題があります。
昔から、売主は複数の不動産会社から査定を取ることを良く行っていました。
複数の不動産会社に査定を依頼していた理由は、「適正な査定価格を知ること」が目的です。
売主として複数の不動産会社に査定を依頼することは、決して悪いことではありません。
むしろ、大切な資産をきちんと売るためには、査定は複数の不動産会社から取るべきです。
ただ、昔は複数の不動産会社に査定を依頼するとなると、1社1社、不動産会社を回り、査定を依頼するという大きな手間が発生していました。
そこで、その手間を大幅に削減することを目的としたサービスが、「不動産一括査定サイト」になります。
不動産一括査定サイトは、簡単に複数の不動産会社に査定依頼することができ、便利になったという点がメリットです。
もし、信頼できる不動産会社を知っており、他社に査定を依頼する必要がない人であれば、不動産一括査定サイトは利用する必要がありません。
不動産一括査定サイトは、あくまでも複数の不動産会社から査定を取りたい人向けの「お助けツール」ということです。
2.仕組みが生む弊害
売主が複数の不動産会社に査定依頼することは、悪いことではありませんし、むしろするべきです。
ただし、一括査定サイトは、その仕組みがもたらす弊害があることを知っておく必要があります。
一括査定サイトでは、査定を行う不動産会社とは別に「一括査定サイト運営会社」が存在します。
不動産の査定は、店舗に出向いて査定依頼しても必ず無料です。
理由としては、不動産会社が得ることのできる仲介手数料は、売却を決めたときのみに請求権が発生する成功報酬だからです。
そのため、不動産会社は査定だけで、別途、「査定料」を取ることができません。
不動産会社に査定を依頼したときは、必ず無料となります。
一方で、不動産一括査定サイトで査定の依頼をしても必ず無料です。
しかしながら、利用者が無料となると、「一括査定サイト運営会社」はどのようにして収益を得ているのか疑問が残ります。
「一括査定サイト運営会社」はボランティアで行っているわけではなく、しっかりと収益を得ています。
一括査定サイトでは、利用者から査定依頼の申込があると、査定に参加する不動産会社が「査定参加料」として一括査定サイト運営会社に約1万円程度の金額を支払うことになっています。
6社に査定の依頼をすれば、各社が1万円を一括査定サイト運営会社に支払うため、一括査定サイト運営会社は査定の度に6万円儲かるという仕組みです。
査定に参加できるということは、不動産会社にとってもメリットがあります。
それは一括査定サイト運営会社から売主という見込み客を紹介してもらえるからです。
不動産会社が売主を見つけるという地道な営業活動をしなくても、一括査定サイト運営会社からの連絡を待っていれば、見込み客の発掘ができます。
しかしながら、不動産会社の本音を言えば、毎回、査定の度に1万円を支払い、しかも他社と競争しなければならないため、たまったものではないはずです。
もし、店舗に売主が直接相談に来てくれれば、査定をするのにわざわざ1万円を支払うことはありません。
同じ査定であっても、店舗に来客してもらった顧客への査定ならゼロ円で済むのに、一括査定サイトを通じた顧客への査定ならマイナス1万円が生じることになります。
すると、仲介の契約を取れなかったときの損失は、来店の顧客よりも一括査定サイトの顧客の方が大きくなります。
不動産会社は、1万円を払って査定に参加する以上、何としてでも仲介の依頼を勝ち取りたいという動機が働きます。
仲介の契約を取るには、査定価格を高く出した方が取りやすいです。
無理をして売れない価格で査定額を提示することもあり得ます。
不動産一括査定サイトは、1万円を支払わせ、しかも各社を競争させるという仕組みがあるため、査定価格が高めに出てしまうという弊害があるのです。
不動産一括査定サイトを利用する人は、査定額が高めに出やすいということを知っておくと良いでしょう。
3.不動産一括査定サイトのデメリット
この章では、不動産一括査定サイトの本当のデメリットについて紹介します。
3-1.高く売れると誤認する可能性がある
不動産一括査定サイトの最大のデメリットは、高く査定されやすいため、売主が高く売れると誤認する可能性があるという点です。
高い査定価格につられて契約してしまうと、売却が長引き、売主は苦しむことになります。
利用者からすると、「自分たちで査定した価格なのだから、当然、その価格で売れるのだろう」と思いがちですが、実はそんなことはありません。
査定参加料の1万円を取り戻したいがために、わざと高く査定して契約を取っているだけの場合もあるのです。
このような不動産会社は、後から売主に値引きを要求してきますので、売主としては飼い犬に手を噛まれる感じになります。
不動産一括査定サイトは、高い査定価格を生むことを助長するサービスです。
1万円を支払わせて、不動産会社同士を競争させるという仕組みがある以上、いたずらに査定価格が高くなってしまいます。
そもそも、査定価格自体、予想価格に過ぎないので、競争させることに全く意味がありません。
工事の見積もりのように、安い業者を探すための一括査定サイトなら競争に意味がありますが、架空の数字を競争させても意味がないのです。
一括査定サイトでは、不動産会社同士が架空の数字を競争しあう結果、売主に対してあたかも「こんなにも高く売れますよ!」と思い込ませてしまうデメリットがあります。
このように、有利な方向に誤解してしまうことを、「有利誤認」と呼びます。
不動産一括査定サイトには、売主が高く売れるという有利誤認が生まれやすいという点が本当のデメリットです。
査定結果の中で、特に高い価格ほど信じてはいけません。
高い査定価格には絶対に飛びつかないようにしましょう。
3-2.良い不動産会社に依頼できるとは限らない
不動産一括査定サイトには、良い不動産会社に依頼できるとは限らないというデメリットもあります。
不動産一括査定サイトを利用すると、全然知らない遠くの不動産会社が査定に訪れるということがあります。
近所に良さそうな不動産会社があるのに、その不動産会社が参画企業として登録されていなければ、査定には訪れません。
ひどい一括査定サイトになると、名古屋の不動産を査定するのに東京の不動産会社が査定しに来ることもあります。
また、田舎の場合には「査定できる会社がありません」というようなメッセージが出てくることもあります。
不動産一括査定サイトは、自分が知っている不動産会社を選べないという使いにくさがあります。
近くに気になる不動産会社がある場合には、不動産一括査定サイトを利用せず、その不動産会社に直接出向いて、査定を依頼するのが良いでしょう。
尚、良い不動産会社に依頼できないというデメリットについては、利用する一括査定サイトを選ぶことでかなり解消することができます。
一括査定サイトの中には、業者選定をしっかり行っているサイトもありますので、利用する場合には実績のあるしっかりした一括査定サイトを利用することをおススメします。
3-3.しつこい営業電話がある
不動産一括査定サイトを利用すると、「不動産会社からのしつこい営業電話がある」というデメリットもあります。
不動産会社も1万円を支払って査定に参加していますので、簡単に引き下がるわけにはいかないのです。
仕組みを知れば、なぜしつこいのかが分かると思います。
売主が本当に売りたい場合には、やる気のある営業電話は大きなデメリットにはなりません。
しかしながら、査定を依頼すると不動産会社が個人情報を売り飛ばしているような一括査定サイトもありますのでご注意ください。
個人情報がばら撒かれると、そこからいっせいに電話がかかってきますので大変なことになります。
中には、悪徳な不動産会社が個人情報を転売しているようなケースもあり、100件くらいから電話がかかってくることもあるようです。
しつこい営業電話や悪徳業者の問題に関しては、電話相談窓口がある不動産一括査定サイトを利用することで、防衛することができます。
電話相談窓口がある不動産一括査定サイトなら、「営業電話がしつこいので、なんとかしてください」と言えば、不動産一括査定サイト側からしつこい営業をストップしてもらえます。
電話相談窓口は絶対必須ですので、不動産一括査定サイトを利用するなら必ず電話相談窓口の有無をチェックしてから使うようにしましょう。
4.不動産一括査定サイトの上手な使い方
不動産一括査定サイトにはデメリットがありますが、上手く利用して売却に成功している人がいるのも事実です。
そこでこの章では不動産一括査定サイトの上手な使い方について紹介します。
4-1.価格検証として利用する
不動産一括査定サイトは、価格検証として利用することが効果的です。
不動産一括査定サイトは、簡単に複数の不動産会社に査定を依頼できることがメリットでした。
複数の不動産会社から査定と取って価格検証することは悪いことではありませんし、むしろ売主としては売却前に当然行うべき手順です。
不動産一括査定サイトでは、全ての査定価格が信用できないということではありません。
群を抜いて高い価格は怪しいのであって、それ以外の似たり寄ったりの価格は相場を表し、信用できる価格になります。
例えば、査定結果が下図のような場合、B社のような高過ぎる価格は売出価格として採用すべきではないです。
似たり寄ったりのA社、C社、D社の価格が相場のストライクゾーンであり、ストライクゾーンの中の価格が高過ぎず、安過ぎない価格となります。
不動産一括査定サイトを使っても、高過ぎる査定価格を除けば、適正な価格を知ることが可能です。
例えば、近所の知っている不動産会社に査定を依頼し、価格検証のために不動産一括査定サイトを使ってみるという利用方法もあり得ます。
複数の不動産会社に簡単に査定依頼することは、不動産一括査定サイトの最も得意とする部分です。
手間をかけずに価格検証したい場合には、不動産一括査定サイトを利用するのが良いでしょう。
4-2.一般媒介で依頼するために利用する
不動産一括査定サイトは、一般媒介で依頼するために利用するのが最も効果的です。
実際、私の周囲でも「不動産一括査定」+「一般媒介」の組み合わせで楽に売却している人は多くいます。
不動産会社に仲介を依頼する契約を媒介契約と呼びます。
媒介契約には、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。
一般媒介契約とは、複数の不動産会社に重ねて媒介を依頼することができる媒介契約です。
専任媒介契約と専属専任媒介契約は、1社の不動産会社にしか仲介を依頼できない契約になります。
専任媒介契約と専属専任媒介契約の違いは、自己発見取引をできるかどうかです。
自己発見取引とは、売主が自分で買主を探してくることを指します。
自己発見取引はできるのが専任媒介契約で、自己発見取引すら禁止されているのが専属専任媒介契約です。
一般媒介と、専任媒介または専属専任媒介(「専任媒介等」と略)の違いを概念図で比較すると以下の通りです。
仮に各社が2人ずつの買主を見つけてくるとしたら、1社しか依頼できない専任媒介等よりも、複数社に依頼できる一般媒介の方が明らかに買主の見つかる確率が高まります。
また、不動産会社へ支払う仲介手数料は、成功報酬ですので、最終的に買主を決めた1社にのみに支払うことになります。
よって、一般媒介で複数の不動産会社に依頼しても、専任媒介等で1社の不動産会社に依頼しても、売主が負担する費用は同じです。
同じ費用で、買主の見つかる確率が高いのであれば、専任媒介等よりも一般媒介の方が明らかに有利といえます。
元々、不動産は株や国債などと比べて換金性が低い資産です。
換金性が低いとは、つまりは売りにくい資産ということを意味します。
専任媒介等を選択すると、元々売りにくい不動産をさらに売りにくくしていることと同じです。
そのため、専任媒介等は、よほどの理由がない限り、基本的に選択すべきではありません。
不動産一括査定を使って売却に失敗している人は、「不動産一括査定」+「査定価格が高い不動産会社に専任媒介」の組み合わせをしているケースです。
ただでさえ、査定価格が高過ぎる不動産会社は信用できないのに、その不動産会社を専任媒介等で選んでしまっては、一層売却を難しくしてしまいます。
しかしながら、一般媒介は売主にとって有利な契約ですが、実際に複数の不動産会社に声をかけて依頼するのはとても面倒です。
不動産一括査定サイトであれば、査定に来た不動産会社にそのまま売却の依頼をすれば、スムーズに一般媒介での依頼をすることができます。
また、不動産会社もわざわざ1万円を払って査定に参加していますので、一般媒介で全社に依頼してあげた方が不動産会社も救われます。
武士の情けではありませんが、査定してくれた不動産会社には、全社に媒介の依頼をしてあげるのが良いでしょう。
尚、一般媒介と専任媒介のどちらで依頼すべきかについては、以下の記事で詳しく記載しています。
ぜひご参照ください。
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4-3.不動産会社探しのツールとして利用する
不動産一括査定サイトは、不動産会社探しのツールとして利用するのも効果的な利用方法です。
「高い査定価格を出す不動産会社」を探すのではなく、「良いサービスを提供している不動産会社」を探すのに利用します。
例えば、仲介で評判のいい会社の1つに「三井住友トラスト不動産」という会社があります。
「三井のリハウス」や「住友不動産販売」に比べると認知度が低いため、知らない人も多いのではないでしょうか。
実は、この「三井住友トラスト不動産」はサービス内容が良く、利用者からの評価が非常に高い会社です。
一括査定サイトを使うと色々な不動産会社が査定に来ますので、今まで自分が知らなかった良い会社を知ることができるというのもメリットです。
代表的な不動産会社のサービス内容は、以下の記事に詳しく記載しています。
ぜひご参照ください。
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査定する会社で、評判の良い不動産会社が一番揃っている一括査定サイトは、NTTデータグループが運営するHOME4Uになります。
以下にオリコンが公表している「不動産仲介 売却 顧客満足度ランキング」を示します。
下表の中で、赤字で示した会社がHOME4Uで査定に参画している不動産会社です。
マンションであれば、満足度TOP5の中に、HOME4Uに登録されている不動産会社が4社も入っています。
戸建ても、TOP5のうち、3社がHOME4Uに登録されています。
HOME4Uは、業者選定がとてもしっかり行われている一括査定サイトです。
どこか良い不動産会社がないか探したい場合には、HOME4Uを不動産会社探しに利用してみることをおススメします。
また、HOME4Uには、フリーダイアルの電話相談窓口も設置されています。
万が一、しつこい営業電話や、悪徳業者が混じっていたとしても、電話相談窓に助けを求めることができるため、安心して利用することができます。
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5.まとめ
以上、「不動産一括査定サイトのデメリット」について解説してきました。
不動産一括査定サイトは、有利誤認の可能性があることが最大のデメリットです。
不動産一括査定サイトでは、高い査定価格にはくれぐれも注意してください。
一方で、不動産一括査定サイトは「価格検証として利用」、「一般媒介で依頼するための利用」、「不動産会社探しのツールとして利用」といった目的で使う分には、利用する価値があります。
一括査定サイトという名前ですが、高い査定価格を得ることを目的としては使っていけません。
予想に過ぎない査定価格を競争させてみたところで意味がありませんので、デメリットには十分留意した上でご利用ください。
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