「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、中古住宅の購入は実際に見て判断することがとても重要です。
購入希望物件は内覧会で見ることができます。
内覧会ではどのようなところを見れば良いのか分からない人も多いと思います。
また、できれば第三者のプロにも見てもえると、より安心できます。
そこでこの記事では、自分で内覧をする際に使えるチェックリストと、プロに見てもらうインスペクションについて解説します。
最後までお読みいただき、中古建ての購入に役立てて頂けると幸いです。
この記事の筆者:竹内英二 (不動産鑑定事務所:株式会社グロープロフィット代表取締役) 保有資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・中小企業診断士・不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン |
目次
1.内覧会とは
内覧会とは、購入希望物件を実際に見に行くことです。
内覧や内見などとも呼ばれます。
物件は、実際に見に行かないと天井の高さや眺望、風通し、周辺の環境等が分かりません。
中古住宅の購入は大きな買い物ですので、必ず内覧を申し込んで見に行くようにしてください。
物件のインターネット広告(SUUMOやアットホームのこと)やチラシには、必ず不動産会社の連絡先が書いてあります。
売物件は、常に内覧はウェルカムです。
気になった物件は遠慮なく不動産会社に連絡し、バンバン内覧するようにしてください。
内覧では、まず不動産会社に内覧したい旨の連絡を行います。
不動産会社は売主と日程調整を行ってくれます。
内覧で多くの情報を得るには、事前に間取り図をじっくりと見て予習しておくことが重要です。
あらかじめ、家具のレイアウトも考えておくと、意味のある内覧を行うことができます。
内覧では物件のチェックのみならず、売主に周辺環境の情報を聞くこともポイントです。
お肉が美味しいスーパーや、腕の良い医者、評判の学習塾等、売主は住んだことのある人ならではの生の情報を知っています。
売主からの情報集めも内覧で重要なポイントですので、気になる質問事項も事前にまとめておくと良いでしょう。
2.内覧会の持ち物
内覧では以下の物を持参していきます。
1.チェックリスト(第4章「内覧会チェックリストPDF」で提示します。)
2.大きな家具や家電製品の寸法リスト
3.方位磁石
4.メジャー
5.間取り図(チラシ等)
6.周辺地図
7.筆記用具(画板もあると書きやすいです)
8.カメラ(デジカメや携帯等)
大きな家具や家電製品については、あらかじめ寸法を測っておき、現地で部屋に収まるかどうかを確認するようにしてください。
メジャーは窓や部屋の寸法を測り、カーテンや家具の購入の参考にします。
間取り図には、現地でコンセントの位置を書き込んでおくと、後でとても役立ちます。
周辺地図へは、売主から聞き出した周辺の環境情報をメモしておくと良いでしょう。
筆記用具は画板のようなものも持っていくと、現地でメモがとりやすくなります。
3.内覧会チェックポイント
見学時のチェックポイントは、外観15か所、内部15か所の計30か所になります。
最初に外観のチェックポイントをご紹介します。
次に内部のチェックポイントを紹介します。
4.内覧会チェックリストPDF
ここでは参考までに前章で紹介したチェックポイントをリスト化したものを提示します。
このチェックリストはあくまでも雛形ですので、一度目を通し、他にチェックしたい項目があれば付け加えるようにしてご利用ください。
↓↓↓PDFは以下よりダウンロードできます↓↓↓
5.周辺環境は必ずチェックする
物件の内覧会に行ったら、必ず周辺環境も確認するようにしてください。
不動産を購入することは「環境を買うこと」とも言われています。
物件そのものよりも、環境を気に入って購入する人はとても多いです。
周辺環境は、主に食品スーパーや診療所、学校、駅までの道のりなどを確認しておきます。
特に、食品スーパーに関しては実際に買い物をして帰ることもおススメします。
新しい家を買えば、その環境での生活がこれから続きます。
住んだら楽しそうな街であれば、それに越したことはありません。
周辺環境のチェックも非常に重要ですので、事前に行きたいところをピックアップしておきましょう。
6.その他チラシで確認したいこと
チラシの段階で、以下の3つのことを確認しておくことも重要です。
1.媒介契約の種類
2.住宅ローン控除の適用要件
3.インスペクション実施の有無
6-1.媒介契約の種類
物件のチラシには、必ず「取引態様」が記載されています。
取引態様とは、売主・貸主・代理・媒介(仲介)といった不動産会社の関与の仕方のことを表します。
取引態様が媒介(仲介)の場合、たまに「専任」と書かれたチラシを見ることがあります。
これは仲介会社が売主と専任媒介契約を締結しているということです。
専任媒介契約とは、売主が仲介の依頼をその1社にしか依頼していないということを意味します。
関与している不動産会社が1社だけだと、他の不動産会社が割り込んできて物件を横取りされることがないため、買主としては競合が減り買いやすくなります。
専任媒介契約の物件は、買主は焦って決断する必要性も低くなり、また売主とじっくりとの値引交渉もしやすいです。
専任の物件は安く購入できる可能性があるため、物件を選ぶ上での1つのポイントとなります。
取引態様の媒介契約の種類もしっかり確認しておきましょう。
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6-2.住宅ローン控除の適用要件
中古住宅では、全ての住宅で住宅ローン控除を受けられるわけではありません。
住宅ローン控除を受けられる中古住宅の要件は以下の5つです。
1.合計所得金額が3,000万円以下の人。
2.自分が住むための住宅であり、床面積の50%以上が居住部分であること。
3.床面積が50㎡以上であること。
4.取得後6ヵ月以内に居住し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること。
5.以下のいずれかの要件を満たした住宅であること。
(ア)木造などの非耐火建築物は築20年以内、耐火建築物は築25年以内であること。
(イ)築年数にかかわらず新耐震基準に適合する住宅であることが証明されたこと。
(ウ)既存住宅売買瑕疵保険に加入していること(加入後2年以内のものに限る)。
戸建ての場合、重要な要件が「床面積が50㎡以上」と「築20年以内」の2点です。
戸建てを購入するのであれば、まずは「築20年以内」の物件を探すことをおススメします。
築20年超であれば、「新耐震基準に適合する住宅」または「既存住宅売買瑕疵保険に加入している住宅」を選択しないと住宅ローン控除を受けることができません。
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住宅ローン控除の節税メリットは大きいので、購入したい物件が住宅ローン控除を使えるかどうかをしっかりと確認するようにしましょう。
6-3.インスペクション実施の有無
売主がインスペクションを実施していると、かなり安心感があります。
インスペクションについては、次章で詳しく解説します。
インスペクションを実施している物件であれば、自分でチェックできること以上の内容を専門家が既に確認済みです。
残りは家具等が入るかどうか、また周辺環境が良好かどうか等をチェックすれば十分といえます。
7.インスペクションの実施を要求しよう
この章ではインスペクションについて詳しくご紹介します。
7-1.インスペクション(建物状況調査)とは
インスペクションとは、建物の専門家による既存住宅の基礎、外壁等の部位ごとに生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を目視、計測等により行う建物状況調査のことです。
建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、国の定めた既存住宅状況調査方法基準に基づき調査を行います。
あくまで目視調査になりますが、「レーザーレベルによる建物の傾き調査」や「床下の木材の目視検査」も行ってくれるため、素人の内覧では絶対チェックできないことも分かります。
家の傾きやシロアリの状況が分かるため、戸建て購入者にはとても価値があります。
インスペクションについては、2018年4月より媒介契約時に不動産会社が売主や購入者に対してもインスペクションを希望するかどうかを確認することが制度化されています。
インスペクションは、売主が行うこともありますし、また売主の承諾を得られれば買主も購入前に実施することが可能です。
2018年4月の制度開始から半年以上経った現在では、買主からインスペクションを希望する人の方が多くなっています。
買主がインスペクションを行う場合には、買主がインスペクションの費用負担を行います。
ちなみに、インスペクション先進国であるアメリカでは、ほとんどが買主の負担でインスペクションを行っています。
日本でも、インスペクションは早くも買主側からの希望の方が多くなっているため、遠からず今後は買主がインスペクションを行うものと思われます。
インスペクションは、あくまでも購入前の調査であり、結果次第では購入を見送ることも当然あり得ます。
購入を見送る場合でも、買主が費用負担をしたのであれば、たとえ見送っても費用は買主の負担です。
少しもったいない気がしますが、逆に言えばインスペクションをやったことにより、変な物件を購入せずに済んだことになります。
また、大きな問題がなくてもインスペクションの結果を価格交渉の材料とすることは可能です。
どんな建物でも劣化事象が全くないということはあり得ないので、根拠を持って値引き交渉ができるようになります。
ただし、インスペクションはあくまでも目視による検査です。
そのため、インスペクションに合格したからと言って絶対に問題がないと確証できるものではありません。
インスペクションの実施によって100%の安心を得られるわけではないということは理解しておきましょう。
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7-2.インスペクションの費用
インスペクションの費用は5万円程度です。
5万円程度であれば、値引き交渉によって十分に元が取れる金額です。
ただし、インスペクションを行うと売却時の重要事項説明において不動産会社がインスペクションの結果の概要を説明しなければならないことになっています。
不動産会社によっては、インスペクションの結果を自分で説明できないため、インスペクター(既存住宅状況調査技術者)へ重要事項説明時に同席を求める不動産会社もあります。
インスペクターが重要事項説明に同席するとなると、インスペクション費用が若干、上がってしまいます。
インスペクターの同席は不要であれば、費用圧縮のために、同席不要の旨をあらかじめ不動産会社に伝えておくことをおススメします。
7-3.結果が分かるまでの期間
インスペクションは、検査申し込みから報告書の受領まで2週間程度かかります。
検査を申し込んだ後、日程調整して検査実施するまで約1週間、検査実施後報告書作成で約1週間となり、合計で約2週間のタイムスケジュールとなります。
実際の検査は2~3時間程度で終了します。
ただし、現在、地方ではインスペクターが不足しているため、インスペクターの確保までに時間がかかっている現状があります。
都心なら申し込みから2週間程度で結果が出ますが、地方だともっと時間がかかる可能性が高いです。
購入希望者からインスペクションを申し入れる場合には、売主にその間の売却を待ってもらうように交渉しましょう。
7-4.インスペクションを要求する際の合意書
購入希望者からインスペクションを行う場合、最大のハードルがインスペクションを実施することについての売主との合意となります。
現在、購入希望者からのインスペクションは増加していますが、それに比例して売主がインスペクションを断るケースも増えています。
売主からすると、購入希望者によるインスペクションは「粗探し」のように感じてしまうため、拒絶する人が少なくありません。
しかしながら、インスペクションの結果は買主にとって非常に重要な情報となります。
もし要望しても実施できないようであれば、その物件の購入は見送るという冷静な判断も必要です。
一方で、売主と合意ができた場合、インスペクションの実施の前に合意書を締結する必要があります。
合意書の内容は、以下の3つがポイントとなります。
1.費用は買主が負担する。(契約不成立となっても他に請求しない)
2.第三者に調査結果を漏洩しない。
3.売主または仲介会社に写しを提供する。
合意書の内容は以下のようなイメージになります。
買主からインスペクションを要望する場合は、上記のような合意書が必要となることを理解しておきましょう。
合意書のワード書式は以下になります。
8.まとめ
以上、購入者必見!戸建て内覧会チェックリストPDFとインスペクションを解説してきました。
内覧は、外観と内部で30項目のチェックポイントがあります。
周辺環境についても忘れずに確認するようにしてください。
自分のチェックだけでは不安な場合には、インスペクションも活用することもおススメします。
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